樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

植生調査

2009年06月25日 | 木と鳥・動物
私の主なフィールド・栃の森は4年前に入山禁止になりました。でも、私たちは10年以上前から野鳥の調査をしているので、それを継続するために許可を得て入っています。私はほとんど貢献していませんが、この森が鳥獣保護区になったのもその調査の成果です
先週末、そのレギュラーの調査に加えて、5年に一度の環境省の調査のお手伝いをしてきました。いつまで経っても鳥の識別力が向上しないので、野鳥の調査は他のメンバーに任せて、私は植生調査を担当。調査地点の植物を高さ1m、3m、10m、15m以上の4段階ごとに調べるのです。

       
              (15m以上は樹木で覆われています)

この作業で改めて痛感したのは、ササがなくなったこと。調査票にはそれぞれの高さごとに植物が覆っている割合を記入する欄がありますが、15m以上ではほとんどの地点が上の写真のように75%以上なのに、1mの高さではほぼ0%。シダやトリカブト、バイケイソウが少し生えている程度で、地表面には植物がほとんどないのです。

       
        (ある調査地点の植生。地表面には植物がありません)
       
         (先日ご紹介した妙高高原の夢見平はササが豊富)

10年くらい前までは、場所によっては藪漕ぎしなければならないほどササが茂っていました。それが今は皆無です。原因はシカ。
有毒なトリカブトやバイケイソウは避けてササだけ食べるのでこんな状態になったのです。林内では最近オオバアサガラとテツカエデが異様に多く、この2種もシカが食べないから増えたのだろうと私は推測しています。
シカと接近する機会も増えました。この日も近くで何度も鳴き声を聞きましたし、同行のメンバーは3頭目撃したそうです。京都大学がこの森でシカの食害調査をしていますが、原生林のためか有効な対策は打てないようです。

       
       (森で増殖しつつあるオオバアサガラ。ちょうど満開でした)

話は変わりますが、今回また遭難騒ぎがありました。一人で入山した人が帰宅しないとのこと。京都府警のヘリコプターや滋賀県警のパトカー、消防署のレスキュー隊も出動していました。お陰で、遭難者は無事保護されたようです。
こうした遭難者が増えたこともあって入山禁止になったようですが、自然観察やトレッキングの本には「関西の秘境」として紹介され、800mくらいの低山なので安易に一人で許可なく入山する人が後を絶ちません。自戒も含めて、低くても山を舐めたらいけませんね。
コメント (2)
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