樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ヤシの実

2009年06月04日 | 木と歌
♪名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ・・・という歌をご存知でしょうか。作詞は明治の文豪・島崎藤村。この歌は、民俗学者の柳田國男が伊良湖岬でヤシの実を拾った話を友人の藤村に伝えたことから生れたそうです。

       
                     (ヤシの実)

その故事にちなんで、伊良湖岬がある愛知県田原市では毎年おもしろいイベントを実施しています。「ヤシの実会員」を募集して沖縄の石垣島からヤシの実100個を海に流し、日本の海岸で拾った人を伊良湖岬に招待し、その実のオーナー(会員)と対面させるというもの。何ともロマンチックなイベントです。
過去20年間に合計101個の実が鹿児島県から山形県までの16都県に漂着し、2001年には見事に田原市の海岸にも流れ着いたそうです。

              
           (ヤシの分布は南の島)(著作権フリー画像)

樹木は自分の子孫を増やすために、虫や鳥に花粉を運んでもらうように蜜を出したり、種を風に運んでもらうように綿毛を作ったりプロペラのような羽をつけたりしますが、ヤシは海流に実を運んでもらうという方法を編み出したわけです。

       
         (大阪「咲くやこの花館」のヤシも実をつけていました)

伊良湖岬はバードウォッチャーの間ではタカの渡りの名所として知られています。私も何度か訪れましたが、南へ渡っていくタカがたくさん見られます。子孫を残すために鳥は空を渡り、ヤシの実は海を漂流するわけで、自然の驚異を感じる場所です。
この記事のためにあらためて『椰子の実』の詞を読みましたが、文豪の作だけあって格調高く、情感も豊か。「最近耳にする歌とはレベルが違うな~」と思いました。
歌詞とメロディーはこちら
コメント (4)
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