樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

銃弾の痕

2009年11月16日 | 木造建築
ミシュランの京都・大阪版が発行されました。宇治市は対象外ですが、近くの伏見区にある魚三楼(うおさぶろう)という老舗が2つ星。料理を食べたことはありませんが、店の前はよく通ります。


(伏見の中心街にある魚三楼)

京都市南部の高級料亭として有名で、店頭の格子に古い弾痕が残っていることでも知られています。明治維新直後の「鳥羽伏見の戦い」では、この辺りで新政府軍と幕府軍が市街戦を展開。街の半分が焼失したものの、この店は弾が当たっただけで焼失を免れたそうです。


(140年前の弾痕)

(格子の内側にも弾の痕が)

近くには寺田屋という旅館があり、坂本龍馬が襲われた時に残ったという柱の弾痕や刀傷が売り物で、歴史ファンや龍馬ファンが全国からやってきます。
ところが昨年の秋、京都市の調査で寺田屋は鳥羽伏見の戦いで焼失した後に再建されたことが判明し、弾痕や刀傷はあり得ないということで、市のホームページの観光ガイドから削除。寺田屋にも「間違った案内をしないように」と指導したそうです。
一方、寺田屋は「焼け残った柱を再利用したので弾痕や刀傷は本物」と反論しています。


(坂本龍馬が常宿にしていた寺田屋)

コンクリートやレンガ造りの建物でも銃弾の痕は残るでしょうが、一方は弾痕を留めて残り、一方は戦火で焼失するというのは木造建築ならではの運命の分かれ道でしょう。
話は変わりますが、ミシュラン京都・大阪版には裏話があります。まず、京都には「一見さんお断り」の店があり、ダイアナ妃が来日した際、ある店に案内しようと外務省が予約の電話を入れたら断られたというくらい…。結局、ミシュランはそういう店の取材はあきらめたそうです。
また、「京料理は皿の上だけではない。庭や調度も含めて一つの文化」という理由で、写真撮影や協力を断った店もあります。実際に本で調べたら、記事や地図はあるものの料理や店内の写真がない、つまりミシュランへの協力を拒否した店が12軒ありました。全82軒中12軒ですから、けっこうな数です。


(病院の待合室にあったミシュランで確認)

記事に利用しておきながら何ですが、私は貧乏育ちのせいか食べ物に贅沢を言うことに罪悪感があって、こういう美食ブームには疑問を持っています。ましてや料理にランクをつけて本にして売るという、上から目線というか傲慢な姿勢が鼻持ちならないので、この12軒に拍手を送りました。
ついでに言うと、食べ物を粗末に扱うことにも抵抗があります。テレビで大食いや早食いの番組、優勝した野球チームのビールかけ、「ギネスに挑戦!世界一長い海苔巻きを作ろう」といったイベントを見ると気分が悪くなります。後進国の飢餓を持ち出すまでもなく、食べ物で遊んだらアカンでしょう。
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6 コメント

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同感! (ichi)
2009-11-16 13:36:12
最後に書かれていましたfagus06さんの食べ物に対するお考え、私も大いに共感します。三つ星とやらにも興味ありません。食べに行くことも無いと思っていますし・・。
おいしいものに興味が無いわけではありません。実は、昨日は神戸に行ったついでに、南京町の老祥記で豚まんを、私にしては珍しく並んで土産に買ってきました。まあ、そんな程度です。
それと、私の中では、幼い頃言われた「一つの米粒でもお百姓さんが1年苦労して作らなければできないんだよ。」という教えは今でも生きています。
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私も (fagus06)
2009-11-17 08:48:15
お気に入りのラーメン屋さんがあって、わざわざ往復15kmをバイクに乗って食べに行きます。
でも、ミシュランで3つ星にランクされた店は、一般人が気楽に行けるような店ではありません。豚まんのように、並べば食べられる店ではありません。
そんな店を一般人向けに本で推奨してどうしろと言うんでしょうね。

京都で取材拒否が続出したことに対して、ミシュランの代表者(フランス人)が、「掲載すれば客が来て売上が伸びる。それを望まないのなら、他の商売をするべきだ」と言ったそうです。この思い上がり! ミシュランの正体が見えました。

私がグルメブームに懐疑的なのは、舌が鈍感で何でもおいしく食べられること、何度も外食できるほど豊かではないという妬みがあるからかも知れません(笑)。
でも、舌は鈍感な方がいい、何でもおいしく食べられる方が幸せだと思っています。
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Unknown (guitarbird)
2009-11-17 11:17:40
こんにちわ
私は人並みにおいしいものは好きです。
しかしその人並みというのがどういうものなのか、
自分で書いていて分からなくなりました・・・
出来る範囲でいい物は食べたいとは思っています。
それと、出かけた先のおいしいものは食べたいです。
一方、大食いや食べ物で遊ぶことなどは私も好きではありません。
イタリアのトマトを投げるお祭りとかも、もったいないと思うし、
それはもちろんきちんと効能があるのでしょうけど、
小豆を使った枕などももったいないと思ってしまいます・・・
それとは別に、古い建物や街並みを観るのは大好きで、
そういう観点ではこうしたガイドは楽しいとは思います。
というように、現代社会に生きている以上、私も、
どちらかにすぱっと割り切れない面は持っています。
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食べ物を粗末にしないように (scops)
2009-11-17 18:12:25
厳しく躾けられましたので、食べ物で遊ぶなんてもってのほかだと思います。一人テレビに向かって文句言ってます。(笑)

舌はね、残念ながら鈍感なほうじゃないんで、何でもおいしいと言うわけにはいかないんですが、まずくても残せないです。子供のときの躾って結構残りますねえ。

ミシュランですが、確かに傲慢。
調査員の舌がどんだけのもんやねん、とも思いますよね。(笑)
ま、おいしいものはミシュランの星の数や値段にに関わらず、個人の味覚ですからねえ。それを見て行きたい人は行けばいいし、なんて思ってます。

余談ですが、
ネットでも商品のレビューでの評価が浸透してますね。ミシュランとある意味共通するところがあると思いますが、そういう時代ということでしょうか。
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guitarbirdさんへ (fagus06)
2009-11-18 08:20:33
同じ食べるならおいしいものを食べたい、というのは誰でも同じだと思います。私もラーメンとかカレーとか身近な食べ物はそうしています。
結局、程度問題ということですかね。

記事には書きませんでしたが、トマト投げも「どうなんだろう?」と思っていました。食べられないトマトならいいでしょうが…。
日本のワンコそばの早食いも疑問です。

もったいないのも理由ですが、例えば、ビール工場の人たちは、自分たちが丹精込めて作ったビールが、飲まれることなく、野球選手に大量に掛けられるシーンを見てどう思うでしょう。私がビール工場の従業員だったら、腹が立ちます。
ヤクルトが優勝したら、ヤクルトシャワーをするでしょうか?
そんなに濡れたかったら、放水車で水をかけてもらえばいいのに、と私は思います。
返信する
scopsさんへ (fagus06)
2009-11-18 08:33:11
ミシュランの覆面調査員は、確か6人が日本人、1人がフランス人でした。
ちなみに、大阪地区ではどうだったのか調べたら、65軒中5軒が取材拒否していました。
割合で言うと、京都が15%、大阪が8%。ほとんどが和食の店でした。
洋食のシェフにとってはミシュランの評価が当たり前で抵抗がないけど、プライドのある和食の店は抵抗があるのでしょうね。

グルメの口コミサイト、私も仕事でよく利用します。個人レベルでグルメ評論したり、食べ歩きするのは、趣味の問題ですからいいと思います。
でも、ミシュランみたいに権威を振りかざすと反発したくなります。
それでも、東京版は30万部売れたそうです。スゴイな~
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