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樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

Green Wash

2012年09月17日 | 森林保護
いつも見ている樹木のポータルサイトには、毎日のように「どこそこの企業が植樹活動をした」というニュースが掲載されています。2年前にも同じことを書きましたが、そのほとんどは「グリーンウォッシュ」だと私は思っています。
欧米では「環境にやさしい企業」を装う行為を、「ホワイトウォッシュ(汚れた壁を白く塗り変えること)」をもじって「グリーンウォッシュ」と呼んでいます。
ある企業は自社の植樹活動をテレビCMでアピールしていますが、私は「CMに使うお金を別の環境活動に使ったら?」と思いながら見ています。これもグリーンウォッシュでしょう。
先日、グリーンウォッシュに関するセミナーが開催されたので参加してきました。そこで事例の一つとして取り上げられたのがニッサンの電気自動車「リーフ」。
下はニッサンのWebサイトですが、特徴の第一に「ゼロ・エミッション」を掲げています。説明文は「走行中の排出ガスはゼロ。CO2はもちろん、窒素酸化物も一切出しません」。



最初は「この表現のどこに問題があるの?」と思いました。しかし、BMWが電気自動車を発売した際の以下の広告は「グリーンウォッシュである」と指摘され、最終的にBMWはこの広告を取り下げたそうです。


BMWの広告「楽しさ100%、排出ガス0%」(セミナー会場のパワーポイント映像)

理由は、電気は化石燃料や原子力でつくられ、CO2の排出量は0ではないから。欧米の「グリーンウォッシュ」に関する意識はここまで進んでいるということですね。
ニッサンの「リーフ」は今の日本では許されるレベルだと思いますが、以下の「いろはす」のCMは明らかにグリーンウォッシュでしょう。



植物由来の素材を使ったペットボトルであることを、植物から生まれたような表現でアピールしていますが、その素材は全体の5~30%に過ぎません。欧米なら即取り下げでしょうね。
偉そうに書きましたが、実は私も仕事でしょっちゅう「環境にやさしい商品」とか「自然な味わい」などと書いています。ヨーロッパではこういう表現も根拠を示さない限り×だそうです。
現在の日本は「グリーンウォッシュ」という言葉さえ知られていませんが、そのうちに表現が厳しく規制されるでしょうね。困ったな~

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樹木の移動制限

2011年08月18日 | 森林保護

以前、自然公園に外来種を植樹すべきではないと書きましたが、在来種でも苗木を遠く離れた地域に植えるべきではないと森林総合研究所が警告しています。例えば、北海道で育てたミズナラの苗木を京都府の山地に植樹してはいけないと言うのです。

今年3月に発表した『広葉樹の種苗の移動に関する遺伝的ガイドライン』によると、10種類の広葉樹で実態調査し、そのうちのミズナラ、ブナ、ヤマザクラ、ウダイカンバ、イロハモミジ、オオモミジの6種について境界線を定め、それを越えて移動させないように注意しています。

たとえば、ミズナラは石川県~岐阜県~長野県南部~山梨県~神奈川県を境にした東西2地域、イロハモミジは福井県~滋賀県~三重県を境にした東西2地域、ヤマザクラは山口県~九州とそれ以西の2地域というように樹種ごとにエリアを分けています。

 

 

西日本と東日本で移動制限されたミズナラ(栃の森の巨木)

 

同じ種類でも地域よって遺伝的な差異があり、異なる集団を人為的に混ぜると、それまでに自然が長い年月をかけて築いた遺伝構造を破壊する可能性がある。その結果、一定の地域で適応してきた集団が死滅したり、遺伝的な多様性が損なわれ、種の衰退につながる…。森林総研はそう警告しているのです。

指定した6種のうち、ブナだけは日本海側(北海道~鳥取県)、太平洋側(宮城県~和歌山県)、西日本(中国~四国~九州)の3地域に分かれています。

 

 

3地域で移動制限されたブナ(春の芽吹き)

 

実は、うちの庭をつくるとき、植木屋さんにカシワを注文しましたが、関西には苗木がないので栃木県から取り寄せました。森林総研はカシワの調査をしていませんが、ミズナラと近縁なので移動制限すべき樹種かも知れません。

 

 

庭のカシワ

 

主要な針葉樹(スギ、ヒノキ、アカマツ、クロマツ)についてはすでに林業種苗法という法律で苗木の移動制限がされているそうです。それを広葉樹にまで拡大しようというのが今回の提言の狙い。

実行するには、地域ごとの種の確保、苗木産地の分散化、苗木の産地表示などさまざまな課題があるようですが、長いスパンで考えれば立法化するべきですね。

森林総研の資料はこちら

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埼玉県の見識

2011年07月21日 | 森林保護

先日、鳥獣保護区の調査で京都府南部の山へ行ってきました。私の役目は鳥ではなく樹木のチェック。

住宅地から23km離れた小高い山で、頂上には展望台が設けられ、近くの住民がハイキングに訪れるような自然公園です。調べて愕然としたのは、あまりにも外来種や園芸品種が多いこと。「こんな山の中にわざわざナンキンハゼやシダレヤナギを植えなくてもいいのに」とため息が出てきました。

 

 

街路樹によく使われるナンキンハゼは中国原産

 

実は、私が所属する森林ボランティアの活動拠点である森林公園にもアメリカハナミズキやモクレン、ニワウルシなどが植えてあります。また、活動の一環として、野鳥観察小屋の前にピラカンサを植えたりしています。

見かねて、4月の総会では「森林公園に外来種を植えるべきではない」と生意気な意見を述べました。

 

 

最近問題になっているニワウルシも中国原産

 

街路樹によく使われているハリエンジュは、環境省が「要注意外来種」に、日本生態学界が「侵略的外来種ワースト100」にリストアップしています。繁殖力が強く、日本本来の生態系を撹乱する恐れがあるからです。移入されたのは明治時代ですが、100年以上経った今頃になってそのことが判明したわけです。

100年経たないとどんな影響が出るか分からないような外来種を、都市公園や庭はともかく、自然公園に植えるべきではないと私は思っています。琵琶湖にブラックバスを放すのと同じような危険性があるからです。

 

 

「アカシア」の別名を持つハリエンジュは北米原産

 

「そういう考えは偏狭かな?」と思っていたところ、埼玉県も同じ意見のようで、緑化用の樹木に関する厳しい基準を設けています。ハリエンジュ、ニワウルシ、トウネズミモチ、ピラカンサなどの外来種だけでなく、ヤツデ、カクレミノ、シュロ、オオシマザクラなど南方系の日本在来種もブラックリストに載せています。

また、アメリカハナミズキはヤマボウシに、マロニエはトチノキに、トウネズミモチはネズミモチに、ハクモクレンはコブシに、ボダイジュはシナノキに代替するよう勧めています。いずれも前者が外来種、後者が同じ仲間の在来種です。

さらに、植えるべき樹種をリストアップし、どんな場所にどんな樹を植えるべきかという指針を掲げています。

京都府も、いやすべての都道府県もこの埼玉県の見識を持つべきです。ハリエンジュやブラックバスのように、自然の中にはびこってからでは遅いですから。

埼玉県の自然環境課のページはこちら

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林業女子会@京都

2011年02月14日 | 森林保護

前回、林業界の女性パワーを取り上げましたが、京都の林業界でいま注目を集めている女性グループがあります。それが「林業女子会@京都」。

女子大生や林業の現場で働く女性、木工作家、薪ストーブ愛好家など約30人が集まり、森林ボランティアや木材利用のPR活動を展開しています。

前回ご紹介したシンポジウムでもスタッフとしてお手伝いされていて、受付でオリジナルのキーホルダーを販売していたので私も買いました。

 

 

シンボルマークはご覧の通りチェーンソー。名前から想像すると、最近はやりの「山ガール」や「森ガール」と混同されそうですが、マークが示すように彼女たちは硬派です。ヘルメットを被って伐採作業をやったり、京都の北山杉をPRするために京大の学園祭で丸太を組み立てたりしています。

先日、待望のフリーペーパーが創刊されたので早速入手しました。表紙には、腰にナタを挿し、手にチェーンソーを持った勇ましい女性が描かれています。

 

 

中の紙面では、紙製品や家具、食器、楽器、お酒、遊び道具、薪ストーブなどを並べて、いかに人間の暮らしに幅広く木が関わっているかを示しています。当ブログのテーマと全く同じです。

 

 

私が女性なら即入会するでしょうが、残念ながら男なので陰の応援団として見守ろうと思います。

多分このグループに刺激されてのことでしょう、岩手県でも県の林業セクションの女子職員が「森のあねっこ@いわて」というグループを結成しました。今後も全国各地で林業女子グループが結成されるのではないでしょうか。期待したいですね。

林業女子会@京都のブログはこちら

森のあねっこ@いわてのブログはこちら

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国際森林年

2011年02月03日 | 森林保護

マスメディアでほとんど報道されないのであまり認知されていないようですが、今年は「国際森林年」です。ご存知でしたか?

持続可能な森林の経営や保全への認識を高めるために、2006年の国連総会で決められたそうです。前回の国際森林年が1985年だったので、26年ぶり。

そのロゴマークがこれ。

 

 

人間の上にあるリンゴは森が食料を、右にある家は木材として住まいを、左にある十字マークのビンは医薬品を与えてくれることを意味しているそうです。

さらに、シカとカモとイモリと葉は森が哺乳類や鳥類、爬虫類、植物など多様な生物の棲みかになることを、川は飲料水を供給したり水害を防ぐことを、雲と雨は急激な気候変動を緩和することを表現しているそうです。

当ブログのコンセプトである「樹木がいかに多面的に人間に貢献しているか」と同じ方向性なので大筋では納得しますが、疑問もあります。

まず、何故カモなの? オシドリなど森に生息するカモも一部にはいますが、森を棲みかにする鳥を表現するなら小鳥とかフクロウをモチーフにすべきでしょう。バードウォッチャーには違和感のあるマークです。

そして、「このマーク、どこかで見たな~」と思ったら、昨年の生物多様性会議COP10のマークと似ています。人間を中心に具体的な生物のシルエットを描くという表現手法は同じですね。

 

 

私はデザイナーではないもののこういう表現物を依頼される側で仕事をしているので実感しますが、多様性の表現は確かに難しいです。テーマが一つに絞られれば表現しやすいですが、「あれもこれも…」というテーマはモチーフが絞れないので、分かりやすく表現しようとすればこういう集合体になります。

それにしても、もう少し工夫が欲しいな~。COP10は日本開催ということで折り紙にしているんだから…

 

※ロゴマークは、民間企業の使用ではなく、報道などの情報提供ならOKらしいので勝手に使いました。

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京の木の香り

2010年11月15日 | 森林保護
京都府では現在、府内の間伐材と府内産認証木材の利用を促進するため、「京の木の香り整備事業」を実施しています。具体的には、公共施設の設備に京都府産の木材を使ったり、自治会が木製のプランターやゴミ箱を導入する費用を半額助成するというもの。
例えば、京都府民ホールのロビーには下のようなベンチとテーブルが置いてあります。テーブルもベンチもヒノキのようです。



京都文化博物館にも下のようなベンチが置いてあります。ここは昔の日本銀行京都支店で、レンガの洋風建築に溶け込むように赤く塗ってあります。




旧日本銀行京都支店、現京都文化博物館

京都府では来年開催される「国民文化祭」のPRに一生懸命で、「まゆまろ」というキャラクターを使って以下のような木製看板をあちこちに立てていますが、これも多分「京の木の香り整備事業」の一環だと思います。



京都府内では年間4000平方メートルの山林で間伐が行われているものの、製材や丸太、合板などに利用されている間伐材は3割どまりで、残りの大半は山林に放置されているそうです。結果的に森林の荒廃が進むので、それを防ぐための一策として行われているのがこの事業。
次の写真は、家の近くにある府立東宇治高校の下駄箱。スギ材を使用し、生徒一人ひとりが専用できるように鍵付きになっています。このほか、京都府内の各地の学校や文化施設に木製のベンチや本箱、下駄箱が設置されています。



ちなみに、この東宇治高校は宇治市出身のタレント、坂下千里子と安田美沙子の出身校です。もうひとつちなみに、坂下千里子のお父さんは宇治市議会の議長です。
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海外で暴れる日本の樹

2010年09月20日 | 森林保護
先日、「樹木界の暴れ者」と題して、日本で野生化している外来種を取り上げました。その逆で、海外で暴れている日本の樹木はないのでしょうか。
草本ではクズがアメリカで野生化して大きな問題になっているという話を聞いたことがありますが、「木本ではどうなんだろう?」と疑問になって調べてみました。
野生化して本来の生態系を乱す外国産の生物を「侵略的外来種」と呼び、国際自然保護連合は「世界の侵略的外来種ワースト100」を発表しています。その中には日本出自のものもいくつかあって、上述のクズに加えてワカメもリストアップされています。外国ではワカメを食べないので、害藻として扱われるそうです。
そして、アメリカで侵略的外来種に指定されている日本産の樹木は、何とアケビ。日本ではアケビの実が貴重品扱いされるくらいですからそれほど繁茂していませんが、なぜか北アメリカの東部では目に余るほど野性化しているそうです。


栃の森で時々見かけるアケビのツル

多分、観賞用に日本から持ち込まれたものが、たまたま現地の気候条件や土壌に適合したために繁茂したのでしょう。私の推測ですが、上の写真のように、在来の樹木に巻きついて絞め殺すので余計に嫌われるのではないでしょうか。
もう一つ、グミも北アメリカで暴れているそうです。詳しいことは分りませんが、各地で野生化しているため侵略的外来種と見なされているようです。赤い実が成るので、ガーデニング用に持ち込まれたのでしょう。


グミの花

日本生態学会が「日本の侵略的外来種ワースト100」を定めていて、野鳥ではバードウォッチャーにはよく知られているガビチョウやソウシチョウ、樹木では以前ご紹介したハリエンジュもリストアップされています。
「暴れ者」扱いしましたが、罪は生物にあるわけじゃなくて、勝手な思惑で持ち込んだ人間にあるんですけどね…。
アメリカではクズをJapanese Green Monsterと呼んでいるようです。その様子はこちら
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樹木界の暴れ者-②

2010年09月09日 | 森林保護
前回は環境省の「要注意外来生物リスト」にある身近な樹木を紹介しました。このリストには載っていませんが、最近、植物学者の間で問題視されている外来樹木があります。
それはシンジュ(神樹)。天に届くほど真っ直ぐ伸びるので、英語では「天国の樹」、ドイツ語では「神の樹」と呼ぶのでこの名があります。別名はニワウルシですが、ウルシ科ではありません。
原産は中国。ハリエンジュと同じく明治のはじめに移入され、街路樹に使われたり、養蚕用に植えられたそうです。


大阪の松屋町通りに植えられているシンジュ

このシンジュが野生化しているという話を聞いて、「やっぱり!」と気づいたことがあります。いつも大阪に向かう電車の中から、あるゴミ処理場周辺に見慣れない樹木が繁茂しているのを遠目で見て、「野生化したシンジュかな?」と思っていました。先日現地に行って確認したらやはりそうでした。


ゴミ処理場周辺に無数に繁茂するシンジュ

ハリエンジュ(アカシア)ほどは注目されていませんが、各地ではびこっているようで、札幌の円山公園では2004年の台風で樹木が倒れた跡(ギャップ)にシンジュが入り込んで在来種をおびやかしつつあるようです。
動物や魚のように他の在来種を捕食するという被害ではありませんが、その強い生命力で在来種を圧倒するようになれば、結果的に本来の生態系をゆがめることになります。


シンジュは先端の葉が小さいので一見偶数羽状複葉ですが奇数羽状複葉

私は以前から気になっていることがあります。動物園では動物は檻に閉じ込めますが、植物園ではオープンエアで樹木や草花を展示しています。温室でも夏には屋根を開放しています。
その場合、鳥が飛んで来て実を食べ、その種を植物園の外に排泄して、外来植物が逸出することはないのでしょうか。風媒花や虫媒花なら簡単に繁殖できるはずです。
ハリエンジュもトウネズミモチもシンジュも、移入した時は現在のような影響があるとは予想できなかったでしょう。それと同じように、気づかないうちに植物園が外来種拡散の温床になっているのではないでしょうか。
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樹木界の暴れ者

2010年09月06日 | 森林保護
動物の世界では外来種のペットが逃げたり、捨てられて野生化しています。また、ブラックバスなど釣り用に移入された魚が在来種を駆逐するという深刻な問題を引き起こしています。草花でも同様の問題があります。
あまり知られていませんが、樹木の世界にもやっかいな外来種がいます。最も深刻なのはハリエンジュ、別名アカシア。古くは西田佐知子の『アカシアの雨が止む時』、石原裕次郎の『赤いハンカチ』、最近ではレミオロメンの『アカシア』など歌によく登場するように、街路樹として各地に植えられました。


ハリエンジュ(アカシア)は初夏に白い花を咲かせます

原産は北アメリカ。明治初期に持ち込まれ、東京をはじめ全国の都市の街路樹に使われました。特に札幌市ではナナカマドに次いで多く、2万7千本が植えられているそうです。
この樹が野生化し、日本全国の山野、川沿いで自生するようになりました。散歩コースの大吉山でも目にします。さらに、私が通っている原生林にまで侵入しています。上の写真は今年の6月にその原生林で撮影したもの。
環境省は「要注意外来生物」として4種類の樹木をリストアップし、その中にハリエンジュを掲げています。「各地の河川や海岸などでは繁茂し、希少植物を含む在来植物を駆逐するおそれがある。影響の大きい場所では積極的な防除または分布拡大の抑制策の検討が望まれる」とコメントし、伐採を勧めています。しかし、「アカシアの蜂蜜」で知られるように重要な蜜源でもあり、養蜂業者は反対しています。


ハリエンジュはマメ科なので羽状複葉

「要注意外来生物」にはう一つよく知られた樹木がリストアップされています。中国原産のトウネズミモチ。前々回「樹の珍百景-②」で側溝から生えているど根性ぶりをご紹介しましたが、生命力が強いのでどこにでも繁茂します。しかも、移植が簡単で成長が速く、大気汚染にも強いので公園や高速道路の法面などによく植えられます。


近くの高速道路沿いに植え込まれているトウネズミモチ

環境省は、「訪花昆虫や果実食の鳥類への誘引力が強く、多数の種子が鳥により散布されて容易に分布を拡大する。そのため、都市近郊の二次林の種組成や河川敷の植生に影響を及ぼすおそれがある」と警告しています。


トウネズミモチの葉は対生

イチョウをはじめ日本にはたくさんの外来樹木がありますが、中にはこういう厄介者もいるんですね。樹木が悪いわけではなく、勝手に持ち込んだり植えたりする人間が悪いのですが…。
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木喰い虫の脅威

2010年08月12日 | 森林保護
3月に京都の大文字山でナラ枯れ病防除のボランティアに参加しました。その際に主宰者が心配していた通り被害が拡大しています。京都ではもうすぐ送り火が開催されますが、その山が秋でもないのに紅葉しているとローカルニュースで報道されるほど。


ナラ枯れ病で部分的に紅葉した大文字山

大文字山の近く、京都大学の裏山にあたる吉田山にも拡大し、枯れて赤く変色した樹が目立ちます。


ナラ枯れで赤くなった吉田山

さらに、京都市のど真ん中・京都御苑にも飛び火。6月に、苑内でナラ枯れ病に冒されたアラカシが43本発見され、うち4本が枯れ死、34本に薬剤を撒布してフィルムを巻いたという報道がありました。実際、1ヶ月ほど前に訪れた時にはアラカシの巨木に防除フィルムが巻いてありました。
ところが、先日再び苑内を歩いてみると、34本どころか、あちこちの樹にフィルムが巻いてあります。しかも、アラカシだけでなくコナラ、クヌギ、スダジイ、マテバシイなど他の樹種にも広がっています。


スダジイの大木


葉が枯れ始めたマテバシイ

すでに葉が枯れているコナラやマテバシイも見られ、フィルムより高い位置に木喰い虫(カシノナガキクイムシ)の穴が開いているコナラもありました。梅雨明け後の猛暑で木喰い虫の発生がピークを迎え、被害が急速に拡大したようです。


ガムテの上に見える小さな白い部分が木喰い虫の穴

苑内の樹木はもちろんですが、心配なのは生垣として植えてあるウバメガシ。被害木と同じブナ科コナラ属なので、木喰い虫に襲われる可能性があります。そうなれば、4キロに及ぶ周囲が枯れて無残な姿になります。


京都御苑を囲うウバメガシの生垣

ナラ枯れ病防除に取り組む方のメールでは、もはやお手上げ状態のようです。しかも、被害は京都府だけでなく日本全国に広がっています。恐るべき木喰い虫のパワー。後は、韓国が国家プロジェクトとして開発しているフェロモンによる防除に頼るしかないのでしょうか。
偶然かどうか、前回ご紹介した「生存のエシックス」展でナラ枯れ病に関する展示がありました。「バイオミュージック」というコンセプトで、樹木の中の木喰い虫の音を聞かせるという試みです。


木喰い虫の音が聞こえるという木

私がヘッドフォンを装着した時は残念ながら何も聞こえませんでした。その隣では、木喰い虫のさまざまな顕微鏡写真がスライド上映されていました。


スライド上映される木喰い虫の顕微鏡写真

環境と芸術という興味深いテーマですが、一生懸命防除に取り組んでいる人たちからは「何を呑気な!」と言われるかも知れませんね。
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