ライターの脳みそ

最近のマイブームはダム巡りと橋のユニークな親柱探し。ダムは目的地に過ぎず、ドライヴしたいだけ…。

不思議な縁

2007-08-12 06:20:58 | 回想する脳みそ
今月の6日、作曲家の松村禎三さんが肺炎のため亡くなった。享年78歳だったそうな(参考記事)。その作品を聴いたことはあっても、本人と面識はなかった。しかしワシにとって松村さんは「特別な人」なのである。

さかのぼることウン十年前、まだワシが田舎に住んでいた頃、行きつけの床屋があった。当時ワシを担当していたのは店主の息子。息子といってもその人はワシよりは10歳ぐらい年長のニイチャンだった。だから現在はもうジイサンといってよいほどの年齢だろう。

ワシは昔からそうなのだが、床屋や美容室といったところでは上辺の世間話をしない。親しくなれば相手が仕事中であってもかなりつっこんだ話をする傾向にある。相手は迷惑なのかもしれないが、波長が合う人とはディープな内容であってもかなり盛り上がる。

たまたまそのニイチャンとも波長が合ったのだろう。彼は口数が少ないタイプだったが、ワシとは打ち解けて話してくれた。そんななか、たまたまワシがピアノを習っている話をした時のこと。ニイチャン、突然思い出したように

「あのさ、松村禎三っていう作曲家、知ってる?」と訊いてきた。もちろんクソガキであるワシが知るはずもない。いや、正確に言えばその名前は本などで見たことはあった。だから初耳ではない。しかしどんな作品なのかなんてもちろん知らない。せめて三善か武満クラスならばまだ知っていたろう。とにかく、クソガキにその名前はマニアックすぎたのである。

「うーん、名前ぐらいかなあ、知ってるって言っても」
「そうかぁ…」
「でも、なぜその人のことを?」

当時ニイチャンは東京で理容師の修行を終えて帰って来たばかりだった。東京時代は修行中の身とはいえ酒が好きで、新宿(だったと思う)の行きつけの店に通っていたそうな。で、そこで、やはり常連の松村氏と知り合いになり、酒を酌み交わすほどの仲になったのだそうである。田舎に引っ込んでからもニイチャンはたびたび上京したそうだが、馴染みの店に行くと松村氏がいて、そのたびに膝を突き合わせて酒を飲んでいたらしい。

その話を聞いた当時は「へぇ、そんな有名人と知り合いなんですねえ」という程度の感想しかもたなかった。しかしワシがこの業界で仕事をしている今、改めて「縁」とは不思議なものだなと思う。松村氏とは直接面識はなかったにせよ、氏はいわば知り合いの知り合いなのだから。そんなことなら生前の松村氏に会っておけば良かったなと、ちょっと後悔。

それにしても、ニイチャン、まだ元気でいるんだろうか。次に帰省した折、店に行ってみるかな。でもあそこにはとんでもない悪妻がいるのだ。ブサイクなのは目をつむるとしても問題は腕の悪さ。ニイチャンが忙しい時、この嫁がワシの担当だったのだが、当時、何度コイツに耳を切られそうになったことか…。

「あらー、ごめんねー。ついウッカリしちゃってー(棒読み)」…って、コラ! ワシをゴッホにする気か!

激怒したこと数知れず。

今度行ったら確実にゴッホになるかもしれんな…ひぃぃぃぃぃ
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