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「愚か者の夢追い半生記」:雪山渥美

2010年03月27日 | 「Weekly 読書感想」
table>愚か者の夢追い半生記―ある中小企業経営者の喜びと悲しみ
雪山 渥美
新風舎

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 著者は私より6歳年長の先輩ながらさながら同時代記。
常夏の島「徳之島」出生ながら、なぜか"雪山"姓の著者、復帰前の奄美から船酔いしながらのポンポン船に乗っての沖縄渡航、そして上京後の創業、埼玉居住に加え、つい先月、私が名瀬から古仁屋への帰郷路、油井岳から眺めた瀬戸内湾の眺望に感激した同じ経験を数十年前になさっている類似軌跡。しかし、違いも大きい。
 著者は高卒も半ばに、喫茶店、キャバレーボーイから商社勤務と10以上の転職、転移。そして額縁、アート絵画製造会社創業と波乱万丈のキャリア。しかも、ご尊父は奄美、沖縄で遺産浪費、起業、破産、借金暮らし。こうした父親を持ち、水商売、風俗営業転々すると人を嫉み、世を恨むのが常ですが、著者は父親の行跡を感情抜きに淡々と綴る。
 そればかりか最も驚くのは早くからいかなる状況、環境下でも小説を手放さず、自らも同人誌に投稿する一方、奄美では島尾敏男を沖縄では霜多正次、東京ではあの伊藤整等々、錚々たる作家達に臆せず手紙を書き、面談を申し込む等一貫して変わることの無い文学への憧憬。
 こうした小説家指向の人は志し叶わない時は、多くはトップ屋やフリージャナーリストに転進するのだが、著者は最も遠い方向、企業家を目指し、達成するその経歴、志向は本書を読んでもなかなか理解出来ない。失礼ながら、若輩の私の主宰する集いにご参加の際のご挨拶対応、拙書「おきなわ就活塾」(新宿書房)へのご丁寧な感想コメントと言い、苦労人に有り勝ちな屈折、シニカル臭、微塵も無い謙虚、純粋さは一体どこから来るのでしょう。
 自虐的なタイトルから連想されるひねた視点とは大違いな“挫折、環境に左右されない”ピアな性情を保持し続けるある意味で驚嘆すべき南海児、上京奮闘の自分史です。
 雪山先輩“献呈”頂き有り難う御座いました。
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1 コメント

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愚書紹介へのお礼 (雪山 渥美)
2010-03-29 09:29:16
 この度は愚書を懇切丁寧にお読みいただき、身に余る評価をしていただき感激しています。
 先生のブログは大多数の方が愛読していると思います。そこへご紹介戴き本当にありがとうございました。
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