高村光太郎展、終わる

2004-09-04 14:44:52 | 美術館・博物館・工芸品
886817fc.jpg一週間前に、会期終了直前の「高村光太郎展・損保ジャパン東郷青児美術館」に行った。招待券を使いそびれた人からのお流れだ。終了直前にチケットが回ってきたとは情けないが、プライドは高くないので気にしない。終了直前らしく、ほとんどの入場者が招待券でのようだ。例の耳が痛くなる高層エレベーターで42階で降りる。

彫刻家、詩人、高村光雲の子、智恵子の夫。展覧会は作品を一度に鑑賞するといった喜びの他に、個人を総合的に捉えるという作業が可能だ。特に、展示会場を一回りした後、入口(出口の時もある)の年表を見直して見ることだ。光太郎は渡欧中にロダンの存在に大きな衝撃を受けたことがわかる。作風が世界基準に変わった(MLBへ行って振り子打法をやめたイチロウ選手のようなものか)。智恵子の看護生活が作品にプラスになったのかどうか。私観だが、文学にはプラス、彫刻にはマイナスであったのではないかとしたい。
ところで、当美術館は現存する10枚のゴッホの「ひまわり」の1枚を特別展示室で展示している。ガラス越しに見ることができる。日本のお宝の一つだ。しかし、どうも当該社の社員家族とおぼしき母子の会話が気になる。「・・・このひまわり、OO社長の時、買ったのよね、そのせいで・・・」と語調が沈んでいくのである。気になり帰宅後調べると、1987年に50億円以上で購入。時期から言えば、バブルの9合目である。キャッシュフロー的に言えば50億円を常設展入場料500円で取り戻すには10000000人が必要ということになる。ネットプレゼントヴァリューで考えれば・・・。

もう計算は止めよう。しょせん50億円。「ひまわり」のためにビルを建てたわけではないだろうし、2兆円も借金をしたスーパーだってあるのだ。それにしても良く見ると15本のひまわりが描かれているが、うち数本はしなびれて下を向いているように見える。暗示的。

人間バーターゲームはチェックメイトか?

2004-09-03 14:46:17 | ボビー・フィッシャー救出
c77b2113.jpgジェンキンス氏(以下J氏)の帰属問題は徐々に進展している。マスコミの予測では軍法会議で不名誉除隊となり一件落着となるということだ。補足すると、それだけでは日本滞留ができないため、妻との婚姻関係により特別滞留許可を与え、数年後に日本に帰化ということになるのではないか。米国へ渡航するのは日本のパスポートによってではないだろうか。しかし、きょうの問題はJ氏ではない。

現在、茨城の入管収容所にチェス元世界チャンピオン、ボビー・フィッシャー氏61才(以下F氏)が収監されている。7月13日にマニラへ出国しようとしたところ、パスポートの有効期限切れで収容された。驚いたのはF氏であろう。手元のパスポートは有効期限は2007年1月25日までとなっていたからである。

そしてF氏収監の5日後の7月18日にジャカルタからJ氏が日本に到着し、二人の帰属のあいまいな米国人が日本に並存する状態となったのである。米国での知名度は圧倒的にF氏である。冷戦時代に旧ソ連からチャンピオンの座を奪い、その後世界の王座に君臨を続けていた天才プレーヤー。しかし、徐々に反ユダヤの立場を強めて、反米アジテーターに変身(彼自身はユダヤ系であり、ユダヤ社会による金融界やマスコミ支配に反対している)。大統領令を無視して、1992年にユーゴスラビアでのチェスマッチに出場し大統領令違反の罪に問われている。その後、世界各地を転々とし、フィリピンにしばらく滞在後、数年前から日本に在住していた。

1994年には現在のパスポートに継続していることからみれば、米国ではあまりたいした問題と思われていなかったようである。9.11の後、F氏が事件について、「当然の報い」という主旨の発言を各国のマスコミで続けていることに、現ブッシュがキレたのだろう。92年当時の大統領もブッシュである。

有効期限のあるパスポートが本人の知らないうちになぜ無効になったかというと、昨年の12月にフィリピンの米国大使館に御達しがでていたということである。何かの誤認があったのだろうか?いずれにしても6月の段階でパスポートは失効し、出国時にコンピューターのフィルターにかかってしまったのだろう。

話が複雑になるのはここからである。ニューズウィーク誌は直ぐにJ氏とF氏を結びつけ、人間バーター報道をはじめる。また日本人女性との婚姻届が提出された(未受理)。米国籍放棄と難民認定申請が求められるが難民認定は却下される。その他にもいくつかの提訴の山ができあがったのが今の状況である。
タイムテーブルをなぞれば、米国が彼を捕まえようと考えたのは、パスポートを延長した後、9.11以降のことと推測できる。クリントン時代に、前政権の大統領令違反者を捕まえたりしない。また、いくらヒドいスピーチでも、有罪にはできないだろう。
また現実的に米国へ連れ帰っても、国内で反ユダヤキャンペーンをするに違いない男である。またいかにも人間バーターと指摘される時期である。今後どうなるのだろう。

ところで、私は、将棋はそこそこ有段であるが、チェスはレーティングで1500点から1600点程度。初段というところである。将棋の場合、少し有利になると、じっと相手の反撃を待つという防御的な作戦が常道なのだが、チェスの場合はドローになる確率が高く、負けているほうは何とかドローに持ち込もうとする。そのため、少し有利になった場合、これでもかと攻撃にでるのである。F氏の過激な性格もこういうゲーム特有の性格からきているのかもしれない。

しかし、チェスはドローゲームに持ち込めることは多いが、今回の人間バーターゲームでは、どうもチェックメイトに近づいているように感じる。

家電販売実績を読む

2004-09-02 14:47:58 | MBAの意見
3ebcd7ad.jpg7月の家電売上をながめると、考えることがいくつかある。「日本電気大型店協会」は全国売上の1/3をカバーすると言われる。

エアコンは前年より83%増の出荷である。まさに猛暑効果である。効きの悪くなった老朽機の買替えなのだろうか、それとも純増なのだろうか。そこまでは統計では判らない。私の家でも1台買換えた。外国人株主比率1位のヤマダ電機で購入。製品説明は過不足がない。

そして、エアコンは、なかなか競争も厳しい。新機能は内部乾燥とマイナスイオンであるが、デザインや音といった部分も大きな要素だ。無論、価格も重要だ。長期の納品待ちもダメだ。

生産コストの面では、意外にも部品の国内調達率は70%程度と高いらしい。日本は住宅事情や気候が外国とは異なり、国内向けの製品をそのまま輸出することも難しそうだ。

もう一つはDVDである。こちらも83%増。そしてテレビも39%増である。
一説では、ボーナスでエアコンを買わざるを得ないため、AVが売れなくなったという声もあったが、そうは読めない。特定のアナリストの家庭内の問題だったのかもしれない。

しかし、本当にオリンピック効果があったのかどうかは今一つ不明だ。なにしろ、DVDは昨年来、毎月50%増の伸率であるし、テレビは6月でも27%増だからである。秋になって毎月の数字を並べてはじめてオリンピック効果があったかどうかわかるのかもしれない。むしろ、間接的には、オリンピック映像をハイヴィジョンディジタルやワイド画面で放送するための技術や、ハードディスクレコーダーの新製品の発売をオリンピックに合わせたりした新製品効果が大きいのであろう。

しかし、よく考えれば、オリンピックの感動は、その映像がハイビジョンであるとか横長であるとかということとはまったく無関係である。選手のプレーそのものが感動の源泉であり、白黒テレビだって同じである。また、高画質で録画したところで、結果を聞いてからヴィデオをみるのも興ざめである(結局見ない)。

しかしオリンピックは既に終わった。新たなステージとして松下、日立、東芝が液晶テレビの共同化を発表。これからが競争の始まりなのだろう。

一方、さっぱりなのはパソコンと携帯電話である。ここ1年の流れが続き、それぞれ22%減、23%減である。ビジネスモデルがないということだそうである。確かに、CPUとWindowsのバージョンだけは次々に変わるが、実際の効用からいえばそれほどの進化は感じない。買替えの動機が見出せないのである。また、店頭を通らないDELLなどのダイレクト販売は増加していると想像されることから、単に従来の販売方法に頼っている会社は苦しい。

ところで、大型店協会の解説では、エアコンを購入したお客様が来店のついでに冷蔵庫や洗濯機、炊飯器といった白物家電を見て、同時購入する例が多いとのことである(私は電球2本を買っただけだが)。知人夫妻の家庭では、ご主人がDVDを購入したついでに液晶テレビを買ってしまい、奥方からはテレビより先に冷蔵庫を買おうと思っていたのにと争議が発生し、結局冷蔵庫も買うことになったそうである。かくしてユーザーの行動を予測することはきわめて難解である。

三井住友の逆襲

2004-09-01 14:49:42 | MBAの意見
e9836ab4.jpg最高裁が、UFJー三菱間の統合交渉差し止めを求めた住友信託からの抗告を棄却したのは8月30日の夕刻であった。ジャーナリズムでは直ちに、UFJ-三菱間の交渉再開と住友信託の損害賠償請求の提訴が予想されていたが、それにしては住友信託側の態度は強気である。何かあるのか少し調べていたら、段々と正体が現れてきた。四点がわかってきた。

一点目は、最高裁の判断では契約違反の事実を認めた上で、損害賠償を認めた点である。ここまでは合理的に見える。しかし原契約に損害賠償額の規定がない場合、逸失利益の補償は求められず、実害分の補償と慰謝料が対象となる。したがって当初600億とかいった金額ではなく1億円にもならないことになるかもしれない。法廷闘争は補償という点では意味をなさない。
二点目は、統合の比率を1:1と明言している三井住友に対し、いまだに比率を明示しない三菱の事情である。どうも三菱銀行はニューヨーク証券取引所に上場しているために、米国基準で資産評価を行い合併比率を算定することになりそうなのである。その場合、既に公開されている、三菱と同一の評価基準でUFJの不良債権を評価しなければならず、大幅な資産の減額が生じ、合併比率は1:0.3になるという説まである。株主からいえば大損だ。

三点目であるが、店舗の効率である。よく旧住友と旧三和という大阪が強い2行の組合わせは効率的でなく、東日本型の三菱との方が組合わせがいいという指摘があるが、どうも東の支店に比べ西の支店のパフォーマンスが低いのが実態で、西日本の支店こそ2店を1店に集約して営業効率を上げることが合理的と考えられるのだ。

四点目が極めつけだが、英国のフィナンシャルタイムズの報道だが、三井住友がUFJ株を敵対的公開買付けするとのことである。実は、現在のUFJの株主のうち30%以上は米国の機関投資家群である。すでに根回しが終わっているのだろうか。実際に買い付けなくても、株主が三井住友方につけば同じことである。公開買付単価は現在の三井住友株と同じだろう。1.2倍程度に上がるはずだ。
裁判で引き伸ばしたのは、あるいは大株主への根回しの準備期間のためだったかもしれない。
なかなか、スリリングな展開に発展すると考えられる。

それにしても、企業同士が法廷で争うことになると、両者とも腕利きの専門分野の弁護士がしのぎを削るわけである。裁判官がそれらの弁護士たちより正しい判断を下せるかというと、ちょっと怪しい。