産業再生機構COOは正直であったが、

2004-09-08 14:28:11 | MBAの意見
1f1296b6.jpg9月7日、午後1時半。日比谷で行われた産業再生機構のシンポジウムには、500人くらいが集まったようである。8割方は金融関係者のような臭いである。私は2割の方だ。マスコミも各社そろっている。金融庁関係者様方には特等席をごっそり空けてある。
前半は基調講演ということで、金子大臣はじめ何人かが、産業再生機構の今までの仕事をおおげさにほめたたえる。

実は、産業再生機構は、企業買取を当初2年で行い、残る3年の間に再生し、民間にバイアウトする予定になっている。期限付きの会社である。目標は100件と発表されたが、まだ20件台である。締切りは来年3月。たしかに、買取した企業は破綻していないが、大成功というほどのものではない。大企業は今のところカネボウだけだ。

しかし、この段階で、シンポジウム会場から抜け出していたら、後半のパネルディスカッションで表面化した関係者の立場や目標の違いを理解することはできなかっただろう。3時から始まった第二部でも、最初は成功事例の話であったが、冨山COOが、やりたかったけれど、できなかったことの山であったことを話し始める。
冨山氏は、ケインズとフリードマンを例にあげ、市場(ケインズ)の誤りを政府が直す(フリードマン的)ことが重要であり、公的整理と私的整理の中間的事業で、経営者の退席や経営人材の偏在の解消などに対する法的整備が今後も必要との意見で、国家財源の投入は副次的との見解である。
一方、金融系パネラーの意見は、公的権威を有効に使い、不良債権を銀行から引き剥がした点を評価する。また、ケインジアンは公的事業そのものを否定する。まさに現在の状況のところで、思惑が一致しているだけのきわどいバランスの上になりたっている。

さらに、買取事業が収益を上げられるかどうか難しいのは、既存のビジネスモデルで行き詰まっていることが多く、再建にはニッチモデルに頼らざるを得ないように感じた。したがって、2008年までに何割が成功し何割が失敗するのかやや不安が残る。冨山COO自体、ステージの下では、疲れ果てた表情をしているし、続投する気もなさそうである。

ただ、暗然とする部分もあった。パネラーの一人であるエコノミスト田中直毅氏から、第三セクター破綻の話題があった時、COOから、「ゾンビ再生機構と言われないように、再生不能と判断されるものは引き受けてない」との発言があり、さらに「すでに第三セクター、財団法人、病院案件は多数持ち込まれたが、一つも受けていない」と明かされた。箸にも棒にもかからないというレベルのまま、救いの神もいなくなるということなのだろう。

確かに、近くにある横浜市営地下鉄の駅など、東急線の駅の3倍くらい立派で、核シェルターのようだ。最近、駅の運営だけの民営化を打ち出したが、駅が立派過ぎるため、too late, too small の感がある。次は、地銀の不良債権の吟味が必要な時期であるが、懸念は大きい。おりしも産業再生機構の募集締切日来年3月31日の翌日はペイオフ解禁日となる。