バブル学/ケビン・ハセット著を読んで

2004-09-18 14:04:50 | 書評
fc5767d3.jpg「バブル学/ケビン・ハセット 望月衛訳」はなかなかやっかいだ。結論があるようでないような。

この書は相場論として名著であるバートン・マルキールの「ウォール街のランダムウォーカー」の反証のような内容である。「ランダムウォーカー」の趣旨は、ざっくり言えば、「日々の株価変動は(大数の原理)のようなもので、罫線を見て翌日の株価を予想することは無意味であり、もっとファンダメンタルな要素に特化すべきである。インデックスファンドのような売買手数料がきわめて少ないものが正しい」というような内容だが、本書の筆者は過去のチューリップバブルや1987年のブラックマンデー、最近のドットコムバブルについて、バブルかバブルでないかを論証する。

そして、私が理解したところ、いずれも相場が上がっていったのはバブルとは言い切れず、現物株式(あるいは球根)の将来価値が増えていくことによる現在価値としての価格上昇が主因で、バブルとはいえないが、現物価値を超えた投機的要素も若干あり、その部分がバブルであるというような主張と思う。

やっかいな書き方である。
新規産業(例:ドットコム企業)は成長率が世間一般の期待利率より高く、株や資産の現在価値が高くなる。このため成長が続いている間は、どんどん資産価値があがっていく。そこまではバブルではないが、上がったものを時間のメリットを使って転売益を出すことを大勢が期待し始めることからバブルが発生するとの説である。

結局、日本の1980年代後半のバブルは、担保なく貸し込んだ融資とか、コースの下見もしないのに買い込んだゴルフ会員権とか、ハセットの言うバブル部分だけを増幅したのかもしれない。米国のドットコムバブルはまがりなりにも光ファイバー網のような遺産は残したが、日本のバブルで残ったものは、国債と何本かの高層ビルだけかもしれない。
私見では、バブル発生の別の原因として、非経済的な行政的ハザードも関係していると考える。

例えば、ゴルフ会員権を考えれば、会員になることで得られるプレー費用の減(A)とカントリークラブのもつ資産価値を会員数で割った数値(B)の合計(A+B)と大差ないのであればノンバブルで、単に根拠なく次の所有者への転売益を価値に織り込むようになるとバブルというのだろう。しかしこの例でも特にBの算定には一人一人の価値観の差もあるし、カントリークラブの資産といっても要素としてはバブル要因を含んだ地価の価値や、不安定な顧客来場数に基づく収益計画などが考えられ、簡単にはいかない。

しかし、ちょっと理解できないのは、訳者あとがきで、本書はバブル崩壊株を先回りして予想し、信用売で大儲けしようという目的で書かれたとなっているが、そんなことはどこにも書いてないように思えるのだが。