将棋大観・14世名人木村義雄著

2006-10-21 00:00:03 | しょうぎ
ceee3af8.jpg名人戦の朝日・毎日の争奪戦は、将棋連盟の瀬戸際外交が成功し、棋士の年収も少しは改善されそうだが、その一環で「普及振興費」というような性格のおカネが新聞社から1億5000万円払われるようだ。そして、その使途は、退役棋士やインストラクターのポケットに入り、彼らは小・中・高の学校へ行って教えるようである。なぜ、こどもが普及の対象であり、大人向けには補助金がないのかというと、「将棋連盟はプロ棋士の組織で、将来の有望棋士の卵を見つけなければ、いつまでたっても”羽生頼り”の経営になってしまうから」だろう。

そして、私も公営施設でささやかに小学生向けの将棋教室を預かっているのだが、そんなところには、おカネの雨は降ってこない。それなのに、また次の講座の準備が始まっている。12月から”大人まで対象”の「初心者講座」。カルチャーセンターの店長の話では、「できれば2007年問題を対象として・・・」。つまり「DANKAI世代」というコトバは、言われた方が抵抗を感じるので言い換えたわけだ。しかし、「DANKAI世代=2007年問題」ではさらに不快になるのではないだろうか。それに、やはり受講者は小学生ばかりになるのだろうとは、思っている。そして、新講座の方は、かなり安いのだが有料。となれば、ある程度の教育実績を問われるわけで、あらかじめ、色々な資料に目を通している。

中でも、駒落ちを指さなければならないだろうから、軽く駒落ち定跡を見ておこう、と思っても定跡書は少ない。その中で、古典とされるのが、14世名人木村義雄氏が書いた「将棋大観」という著書。駒落定跡のバイブルとして古来有名なのだが、1990年代に内容の一部をカットし復刻したはずだ。

ところが、おおた家には、なぜか、この原書の方がある(その理由は、きょうは省略)。奥付けを見ると、初版ではない。初版が昭和3年に出版され、自宅にあるのは昭和6年物。75年前だ。なんと、「54刷」となっている。大ベストセラーだったようだ。つまり、木村義雄氏は大儲けしたはずだ。「名人は、王様を囲う前に愛人を囲うものだ」という木村定跡を生み出したのは、このベストセラーのおかげかもしれない(その後、この定跡は代々の名人によって色々と変化しているのだが省略)。そして、久しぶりに将棋大観を開いてみる。きわめて読みにくい。1図とか2図ではなく、春図、夏図になっている。

ceee3af8.jpgそして、目次をみると、駒落定跡が順に「六枚落、五枚落、四枚落、三枚落、二枚(飛角)落、飛香落、飛車落、角行落、左香落」と続き、「平手戦」は「四間飛車、向飛車、中飛車、早石田と相懸り定跡が二つ」だけ。例の腰掛銀の方の木村定跡は、まだ出現していなかったのだろう。名人に就いたのは8年後の昭和12年である。

そして、名局解説(江戸時代の棋譜)に続き、本書最後の10ページを費やして、自作の詰将棋を解説している。

ところが、・・・

詰め上がりで歩が1枚余るのである。本人も認めているが、駒が余ってはいけないとは知っているものの、実戦から作ったので直すのも困難だし、というようなことなのだが、ベストセラーの巻末を飾るには大きな違和感を感じてしまう。木村義雄名人ほどの腕前なら、いくらでも完全作は作れるのだろうが、最後に残る1枚の歩には、何か隠された意味があるのだろうか。

14世名人の作に手を入れるなど、お后さまの帝王切開の執刀みたいなものなのだが、恐れ多くも改作してみた。原題の構想を毀すことなく、さらに総使用駒数を18枚から15枚までに圧縮してみた。どんなものだろう。もともと実戦型なので、ほどほどの難易度である。

最後に、10月7日「道場破り!!出現」掲載の本物の実戦詰将棋の解答。
下手番作:▲1一飛成から途中▲7三銀不成とし、桂を8五に打って25手位で▲7五金で詰む。最後はいくつかの別解がある。
上手番作:△7八角成 ▲同玉 △6七金 ▲8八玉 △7七金 ▲同玉 △6八銀 ▲7八玉 △7七香 ▲同玉 △6九銀不成 ▲8八玉 △7九馬 ▲同玉 △7八金まで15手詰。途中の△7七香がキーの一手。こちらは完全作なので、余分な駒を除去して先後逆転させてやればいいのだが、そうなると、15手詰めなら、もう一回小さなひねりがほしいところである。

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