一夜にして、日本で最も有名な詩人になった女性

2011-04-11 00:00:01 | 書評
大震災のあと、さまざまな社会現象が起きているのだが、その一つが、テレビCM。一般スポンサーがCMを自粛したあと、AC制作の広報用のビデオが流されている。

misuzuその一つが、「こだま」。

例の、

遊ぼうって言うと、・・・というフレーズで始まり、すっかり国民の脳裏に入りこんでいった。この詩を書いたのが、金子みすゞという女性。詩人であり、童謡詩人でもある。

彼女のことは、少し前に下関出身の大女優、田中絹代のことを調べているうちに、下関の近くの先崎と言う町で生まれたことを知っていた。今から100年以上前の1903年のこと。(田中絹代は、6年後の1909年の生まれである)

実は、ほんの少し前に三越で、「金子みすゞ展」が開催されていて、行こうと思っていたのだが、行くと三越の会員にされそうなので、ちょっと遠慮したのだが、行けばよかった。

そして、彼女は、西条八十に見出され、20台前半に大量の詩を書く。彼女しか語り得ない自然の側から人間を見るような視点は、時にこの人間の社会の残酷さを暴いたり、人間の営みのあまりにも空しいことを表現したりするのだ。

ただ、彼女にとって最大の不幸は、結婚だった。何の間違いか、最低男と結婚することになる。結果、娘を連れて離婚したのだが、最低男は、彼女の生きる糧であるこの娘を奪おうとするわけだ。そして、絶望した彼女は、26歳の人生に自ら終止符を打つことになる。

その後、55年の歳月が、空白のように流れていった。

そして、1Q84年、彼女の実弟が持っていた3冊の手書きの詩集が、ついに陽の当たる場所に登場したわけだ。

だから、1984年より前に詩を読むことを止めた人は、今まで、彼女のことを知らなかっただろう。

海辺の町に育った彼女の詩には、海を題材にしたものが非常に多い。ACが用意していたのが、たまたま「こだま」だったから、これだけ流れていたのだろうと思う。

例えば、『波』という詩がある。

波は子供、
手つないで、笑って、
そろって来るよ。

波は消しゴム、
砂の上の文字を、
みんな消してゆくよ。

波は兵士、
沖から寄せて、一ぺんに、
どどんと鉄砲うつよ。

波は忘れんぼ、
きれいなきれいな貝がらを、
砂の上においてくよ。


今読むと、かなりシュールな感じがしてしまう。

実は、彼女とほぼ同年代の詩人を、最近知ったのだが、それについては来週にでも。


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