東京国際映画祭「単騎、千里を走る」

2005-10-28 22:34:25 | 映画・演劇・Video
ba8206a5.jpg東京国際映画祭が開催中だ。主催者は「世界10大映画祭の一つ」というが、10大とはどこだろうと考えると、本当はよくわからない。三大映画祭というと、ベルリン、カンヌ、ベネチアということになり、その他、モスクワ、ロカルノ、モントリオール、サンセバスチアン・・・最後の方はよくわからない。

そして、特別招待作品が22、コンペティション参加作品が15。内2作の中国人監督が参加して、先日、東京某所で行われた、中国映画誕生100年祭の特別イベントでは、この2作品の上映とレセプションがあった。特に、今回のコンクールの審査委員長である、チャン・イー・モウ監督の特別招待作品「単騎、千里を走る。」は主演が高倉健であることからして、日中合作映画ということだ。審査委員長の作品ということで別格。

この映画、日本では2006年1月28日の公開ということで、ここに細かなストーリーを書き綴るわけにはいかないが、おおざっぱに言うと、不治の病で生死の境をさまよう息子(声は中井貴一)のライフワークをビデオで視て、未完の仕事の続きを、父親(高倉健)が中国大陸の奥の方に行って、片付けようとするのだが、次々に難問題が発生してきて目的を完遂できない。この目標を完遂するための苦闘の連続が本作の大テーマということになる。基本的には、高倉健の単騎冒険映画(和製インディージョーンズ)。

ba8206a5.jpgチャン監督はストーリーメーカーということで、なかなか悲劇なのか喜劇なのかを明かさない。さすがに大御所。上映の前に、舞台スピーチがあり、やはり「口がうまい」。日本にしょっちゅう来ているようで、ラーメン好き。滞在3日間で6回ラーメンを食べた時もあったそうだ。そして、監督以外にも大物が登場してスピーチ。まずは、中国密使といわれる奥田日本経団連会長。日本で一番えらいサラリーマンだ。無難な発言。そして王毅駐日大使は、「靖国問題」とわかるよう「映画のテーマは家族のふれ合いなのだが、隣人や隣国の嫌いなことをするのは、よくない」と言っていたのだが、全員シカトの風。

そして、「スピーチ中は撮影禁止」と言われていて、さらに中国語での翻訳までされたのに、遠慮なしでカメラ撮影がつづく。どうも観客の40%は中国人なのだ。「ルールは破るためにある」ということか・・よく考えれば、チャン監督や王毅大使に本国で会えるわけもなく、日本留学中だからこそ見ることができるということか。私の席の周りの学生も年配者もみんなカメラマンに変貌した。

ところで、この映画の評価なのだが、よくわからない。日中友好と主張すればするだけ、現実とのギャップが大きくなるという気もする。日中のどちらからも低い評価しか得られないということもあるかもしれない。日本映画でもなければ中国映画でもなく、ちょっと居心地が悪い。


ba8206a5.jpgさて、この映画の他にヤン・ヤーチョウ監督の「泥鰌(どじょう)も魚である」という社会派の作品も出品。こちらはコンペティション参加作品。北京へ集まる「民工」といわれる出稼ぎ労働者男女の生活を超リアルに表現。逆に、こんなに社会の裏側を映画として世界へ発信していいのだろうかと心配になる。こちらは主演女優のニー・ピンさんもトークには出席。

中国の現代におきている貧富の差の拡大がテーマの一つだが、このままだと、またしても共産主義革命でもおきるのではないかと思えるのだが、貧者も少しずつ豊かになり富者はどんどん豊かになるという格差拡大なので、「革命」ではなく「政党の自由化」「宗教の自由化」という方向に向かうのではないかと個人的には思い始めているのだ。


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