切腹最中

2011-01-21 00:00:50 | あじ
知る人ぞ知る大江戸スイーツが『切腹最中』である。「せっぷくもなか」。決して、「せっぷくさいちゅう」と呼んではいけない。



普通の最中と形状が異なるのは、中の餡が大きく横腹から飛び出していることである。切腹して、腹を切った時に、内臓が外に飛び出すことを摸しているそうだ。

で、この最中を売っている和菓子店新正堂は芝愛宕にあるのだが、ほぼ、その店のあった場所は江戸時代は陸奥一関藩主の田村家の屋敷だった。そして、1701年(元禄14年)5代将軍綱吉の時代に事件は起こる。

3月14日。浅野内匠頭による江戸城内刃傷事件が発生。

有名な忠臣蔵の前半部である。直ちに取り押さえられた浅野長矩は、江戸城の不浄門から網駕籠に押し込まれ、綱吉の親友(愛人?)だった、一関藩主の田村建顕邸に送られる。

そして、まだ護送中のうちに、怒り狂った綱吉は、浅野長矩の切腹を決定してしまう。随分早い裁判と処刑だ。現代日本のように16年前のこれも3月に東京中心部で起きたテロ事件の関係者一同が、死刑廃止論者が法務大臣になることを心待ちにしているのとは大違いだ。即日執行ということになる。

各種研究によれば、切腹は、田村家の庭で行われたとされるが、その庭の場所とほぼ同じところに、この和菓子店がある。日比谷通り沿いの碁盤店の前に記念碑が建っているが、ほんとうは、碁盤店の裏に、庭があったようだ。


それで、この切腹最中だが、仕事に失敗して他社に何らかの迷惑を与えた場合などに、手土産にすることになっている。

ただし、相手にユーモアがある場合に限られるわけで、シャレの通じない相手にこれを持って行くと、逆効果になることは間違いない。腹を切るだけじゃ済まず、「指も詰めろ」とか言われたりする。「指詰めチョコレート」とかも持っていかなければならない。


ところで、この最中だが、お店の用意した書き物に、「全日本ANAスイーツ第一位」と書かれている。どうもANA FESTAの発表するお土産物ランキングで1位になったことがあるらしい。ちなみに現在の1位は「東京ぼーの」、2位は「崎陽軒のシウマイ」となっている。リストには、切腹最中も入っているので、人気商品であるのだろう。

が、・・・

よく考えると、これを手土産にするということは、何らかのチョンボをした会社の人が、羽田空港から国内線に乗って日本のどこかのお客様のところに謝りに行くというケースが非常に多いということなのだろう。

飛行機で急ぐビジネスマンって、そういう仕事が多いのだろうか。ちょっと、変な国だ。(もちろん、何度もそういう用件で飛行機に乗ったことがあるが、私の場合の手土産は、虎屋の羊羹と決まっているわけだ)


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