龍涛螺鈿稜花盆について

2021-05-02 00:00:25 | 美術館・博物館・工芸品
3月号の『月刊経団連』の表紙を飾るのが、『龍涛螺鈿稜花盆』。(りゅうとうらでんりょうかぼん)と読む。重要文化財である。元の時代(14世紀)の作品。螺鈿(らでん)とはある種の貝殻をうすくはがして漆器に貼り付ける技法で、様々な色の貝殻を使って竜が躍動する様子が表現されている。全体が8つの尖った花弁を模しているのが元時代の特徴。



龍は、想像の動物で、定法では頭は駱駝、目は兎、角は鹿、耳は牛、首は蛇、鱗は魚、腹は蜃(伝説の霊獣で蜃気楼を作る)、手は虎、爪は鷹の9種のアンドロイドである。注目点は爪の数で、古来の竜は四本爪だったが、宋から元になり皇帝所有物の竜の爪は五本と定まったそうだ。本作の爪も五本である。



国立博物館の所蔵品で3月中には公開されていたそうだが、コロナ禍で上野は地球の裏側のように遠いので行きそびれた。



ところで、本作はどうして現在、国立博物館にあるのだろうか。いつから日本にあるのだろうか。おそらく知ってはいけないのだろう。どこを探してもその秘密の破片すら見えない。ルーツが明らかになると「返してくれ」と言われかねないからだろうか。上に書いたように元の皇帝の誰かのものが、流転して上野にあるわけだ。


ところで、元と言えば、日本の本土を攻撃した国だ。高句麗と元の連合軍が二回にわたり九州北部を襲撃した。実際には暴風雨の前に俄作りの船は破壊され攻撃側の大惨事となった。モンゴル人が中国人と高麗人に強制労働させて作らせ、さらに戦わせたのだから、彼らも本気にはなれない。

実は二回の攻略に備え、日本は北九州の海岸に、いわゆる『元寇防塁』を作った。実際には防塁の場所は破られなかったともいわれる。二回目の元寇の後も防塁は強化されたのだが、おもしろいのは元側も日本からの反撃をおそれて防塁を作っていたこと。

このように戦う両者とも相手の方が強そうだと錯覚すると、守備力を強化するので戦争にはならない。反対に、両者とも自分の方が強いと思うと戦争になるわけだ。

もちろん、現代でもそうだろう。