市ヶ尾彫刻プロムナード『このまちはぼくたちのもの』

2020-03-17 00:00:43 | 市ヶ尾彫刻プロムナード
市ヶ尾彫刻プロムナードの中で最も体積が大きいのが『このまちはぼくたちのもの』。渡辺豊重氏による1995年の作。なにか小学生の作品のようだが、渡辺氏64歳の時の作品。

ある意味、スペインの画家、ジョアン・ミロのような感覚が伝わってくるが、それが渡辺氏の作風である。

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上段の三つは人間の心の中の気持ち(喜びとか驚きとか戸惑いとか)を表し、下段の三つは人間の関係性を表しているようなことだろうか。時代的にしかたがないが、ミロは戦争とか絶望とかそういう人間と社会というような関係性に傾いているように思える。

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そして渡辺豊重氏の旺盛な制作意欲を語るために少し説明すると、1931年に東京に生まれている。終戦は14歳の年だ。そして彼は、23歳の時は川崎の自動車工場で働いていたそうだ。そして働きながらも絵を描き続けていた。そのため、いくつかの賞を受けながら職を転々とすることになる。

そして48歳の時についにパリに行き、抽象絵画に磨きをかけることになる。そして帰国後1990年に意を決し、住み慣れた川崎を後にし、栃木県の馬頭町に移住し、多くの作品を創りだしている。

彼によれば、人間にとって一番大切なのは人間。どうやってこの時代を生きてきたのか。そういうものを絵画を通して記録するのが画家の仕事、ということだそうだ。

そして大震災のあと、毎年のように展覧会を開いているようで、2018年の秋の個展までは追いかけることができた。2019年の展覧会を見つけることができないのが、少し心配である。渡辺豊重氏は今年89歳になる。(ミロは90歳だった)