海洋法による管轄権、クルーズ船の真の責任者は

2020-03-05 00:00:13 | 市民A
ダイヤモンド・プリンセス号は全乗客、全乗員が下船した。ロボット航海士がいるわけではないので、誰かが乗船し、どこかに移動することになるのだが詳細は不明だ。そもそも英国のP&Oという船舶所有者が三菱重工(当時)長崎造船所で竣工した船体を米国のカーニバル社に貸しているはずで、船員は通常はP&O社が手配しているはずだが、貸した先で手配することもある。特徴のある英語を話す船長はイタリア人だそうだ。だいたいそうだろうとは思っていた。

報道では、「船の上は日本ではなく船籍のある英国なので、意のままにならなかった」とか厚生省の役人が言い訳をしたり、評論家が「国際条約が必要だ」とか言っていて大いに違和感を感じていた。領海内だし、しかも港内にいるわけだ。

国連の海洋法条約では、管轄権はかなりきちんと決まっているわけだ。

話を整理すると、まず「海」というのは4種類に分けられる。内海(含む港湾)、領海(12海里)、排他的経済水域(200海里)、公海。そして管轄権の方は「立法」「執行」「司法」と三つに分かれる。どこの国の法律を適用し、誰が管轄して、誰が最終的に裁くのかということなのだが、簡素化して、まとめて「管轄権」ということにしておく。裁判については裁判所で行うほか、海運集会所で行う場合があるが、省略。

まず、内海(瀬戸内海とか)と港湾だが、これは旗国主義ではなく当該国の管轄である。ただし、通例的には船内の統制組織については認めることになっている。

次に領海。こちらは通過する場合か寄港する場合によって異なる。例えば中国籍の客船が中国からアメリカに向かうため、津軽海峡を通過する場合、日本国になんらかの不利益が発生する場合は日本が介入することができるが、そうではない場合、自由航行を妨げてはならない。一方、日本の港湾に入港するために領海内に入った場合、なんらかの不利益(感染とか)がある場合は管轄できる(とはいえ、実際には入港を待つか入港させないことが多い)。

排他的経済水域及び公海の場合は旗国主義が適用になる。

ということで、ダイヤモンド・プリンセス号は横浜港内にほとんどいたのだから、管轄権は旗国(英国)ではなく日本であるわけだ。しかし、管轄権があっても適用する具体的な法律が不足していたのだろう。熱がある乗客や乗員は強制入院になるとか、客室に2週間押し込められるというような既存の法律はないはずだ。


そして、日本に管轄権があるということは、一体、どの組織のどういう役職が、この船が大黒ふ頭に着桟中に管轄する責任者なのかということ。

各港には国土交通省に属する海上保安庁が任命した「港長」という職務があるわけだ。横浜港は東京港と一体化して京浜港という組織になっている。この京浜港の港長というのはルールとして、横浜海上保安部長があたることになっているわけだ。つまり、あの巨大客船を一体的に管轄すべきと思われる役職は、今のところ表には登場していないように感じるわけだ。