遠吠え合戦、そして妙な英語

2020-01-13 00:00:28 | 市民A
カルロス・ゴーン被告が日本を脱出して、彼にとって地球上で最も安全と思われるレバノンに現れた。ベイルートは中東の諸情報が集まる場所で、どこの国もそこに諜報員を送っているはずだ。情報収集、情報交換の場所だ。そういうバランスがあるので、そこで強引に国際秩序を破ってまで圧力を掛けたりすることはないだろう。

まず、別にゴーン氏のやり方を尊敬したり、羨望したりしているわけではないのだが、冷静に考えてみたい。

近いタイムラインからいうと、レバノンに行ったこと。結局、楽器箱がジェット機に積み込まれた段階で、逃走が確定的になった。そもそもフランスの2冊目のパスポートは所持していなくても、結局、レバノン人がレバノンに帰った時に入国させないわけはないわけだ。だからパスポート問題は関係ないだろう。

ICPOを通じて手配しているというのだが、「保釈中の逃亡」の方なのか「密出国」の方なのか調べてもよくわからない。どこの国でも、他国での犯罪者の引き渡しは、原則として母国の法律でも有罪の場合に限られることが多い。ゴーン氏はまだ有罪ではなく裁判も始まっていないし、本人は無罪を主張しているのだから、無理筋の気がする。さらに、「密入国」ではなく「密出国」というのは、そもそも単体では軽微な罪だ。悪い人間が日本からいなくなるのならそれでいいのではないかという考え方もある。

キャロル容疑者の偽証罪というのも、「覚えていない」という内面の問題を今ごろ「偽証」とするのはなかなか困難だと思う。せいぜい、「尋問の時には思い出せなかった」ということになるか、夫婦間の偽証は有罪にならないというのが通例のはずだ。そもそも保釈中に「証拠隠滅のおそれ」というのも、それなら証拠が不足しているのに逮捕して起訴したのだろうかという話にもなる。本音は証拠隠滅ではなく、逃亡防止ということなのだろう。

一方、ゴーン氏も怒り爆発と言うことで、記者会見を多発して挑発しているが、核心的なことは語らない。つまり焦点は「金融商品取引法違反」と「特別背任罪」ということになるが、結局セーフかアウトかよくわからないわけで、少なくとも「横領」ということではなく自分の不足給料を退職後に受け取る契約を確定事項として財務諸表に記載すべきなのかどうかという最初の問題に戻るわけだ。またレバノンやブラジルの住居やクルーザーも日産名義であるわけで個人資産にすりかえたわけではない。あえて言うと中東の代理店に払ったコミッションがゴーン氏の資産になったのかどうかということで、そこの証明が大きなカギだったはず。

もう一つ個人的な疑問だが、大きな上場会社から中小企業に至るまで、会社のカネを個人的に使っている社長や役員は無数にいる。半数近くはそうではないだろうか。会社の経費を全部自分名義の航空会社のクレジットカードで払って貯めたマイルで個人旅行している社長はたくさんいるとカード会社の人に言われたこともある。別荘とか高級車とかゴルフ会員権の会費も会社負担は当然。会計士や中小企業診断士には用はなく、税理士を重宝するわけだ。アウトとセーフの差は何だろうか。国籍?


さて、つまり事態がこれ以上進捗する可能性はほとんどないわけで、現在は東京とベイルートで犬の遠吠え合戦をしているだけということになる。遠吠えは英語では「ハウリング」と言うそうで、二匹同時にワウワウと不協和音をあげることを指すのだが、現在のところ対話型遠吠えということになっている。


ところで、ゴーン氏の逃亡に関連して、あっという間にゲームができたそうだ。つまり、遠吠えの当事者である日本の検察がゴーン氏を捕獲するゲームらしい。「逃げ切れるか、刑務所に送れるか」を争うらしい。詳しいルールは知らないが、マスク、サングラス、パスポート、ジェット機、15億円、楽器箱など必要アイテムを集めるとタクシーで品川駅に向かうことができるとかなのだろう。

問題は、このゲームのネーミング。報道によれば。『Ghosn is Gone』というそうだ。

なるほどという名前なのだが、すこし違和感があり、もしかして『Ghosn was Gone』でないといけないのではないかと感じている。『Ghosn is Gone』では「ゴーン氏は亡くなった」という意味のような気がする。というか、そういうゲームなのかもしれないが。