マラコット深海(コナン・ドイル著 SF)

2015-03-17 00:00:00 | 書評
mrtコナン・ドイルといえばシャーロック・ホームズの生みの親であり推理小説の父と言える作家なのだが、ある時期から出版社からのホームズの新作を待つ圧力に辟易していたようだ。そして、歴史小説や、冒険小説、そしてSFを書き始めたらしい。

どうも、スティーヴンスやジュール・ベルヌのようなジャンルの異なる小説を読んで、「俺でも書ける」と思ったようだ。難しい言葉で言い換えると「触発された」ということだろう。

それらの中の一冊が、「マラコット深海(Maracot Deep)」。大西洋の深海探索船の事故で、海面からのロープが巨大な生物のハサミでちょん切られ、そのまま8000Mの深さに沈み、酸素が欠乏していく。

しかし、そこに現れたのが、アトランティス大陸とともに海底に沈んだ人類の生き残りのいう筋立てになっている。そして、なんとか生還して有名人になるというので、実は彼のSFはすべてこのパターンである。ロンドンからどこかの未知の場所に行って、大立ち回りの末、ロンドンに戻る。やはり、ホームズの方が良かったのではないだろうか。今でも赤川某氏のようにドイルの続編を書いている人もいる。

ところで、酸素濃度が下がってきて(二酸化炭素濃度が上がって)幻覚を見るというのは、現在では医学現象として、『CO2 ナルコーシス』と呼ばれている。あっち側の世界が見えたり、走馬灯が回ったりするのは、血中の二酸化炭素濃度が高まった時の正常反応だそうだ。

そうなると、このSFも、潜水艇に何らかの機器トラブルが起きて二酸化炭素濃度が上がった時に、長大なストーリーの幻覚を見ただけのことだ、と断定してしまうことができるかもしれない。もっともシャーロック・ホームズの数々の活躍だって、「幻覚・妄想小説」ということも・・・赤川さんゴメン。