世界から猫が消えたなら(川村元気著)

2015-03-03 00:00:14 | 書評
neko突然、脳腫瘍で余命数週間と言われたら、・・・

残る日数でできることは何かと言われても、ほとんどの人はたいしたことをしないだろう。もしも世界的発明でもしていてまだ論文を書いていないとか、そんなことは数百万分の1だろう。

ただ、謎だらけの自分の歴史を振り返って、解けないことを知りたいと思うかもしれない。人生の分岐点となった、恋人との別れの意味あるいは原因を知りたいとか、親と不仲になっていったその原因とか・・

ある意味、最近読んだ「流星ワゴン」だって同じ方向性の小説だろう。そちらはタイムマシンが登場するが、「世界から猫が消えたなら」では、悪魔が登場して、余命少ない青年と悪魔の交換条件を取り決める。

そして、物語が淡々と進み、青年は自分史の過去について、一つ一つ意味を解いていくわけだ。最後はともかくも暗闇の中の一筋のを糸つかむことだけはできることになる。

全体的に流暢な文体であるが、題材が重く緊迫感があるため、一字一字丹念に読んでいこうという気にさせる一冊であるといえる。