笠岡市立カブトガニ博物館

2015-02-22 00:00:46 | 美術館・博物館・工芸品
実は、岡山県の西端にある笠岡市の小さな博物館にはそれほど期待していなかったが、行ってみると、地元に生息している生きた化石といえる「カブトガニ」を十分にアピールするすばらしい場所だった。

ただ、大きな疑問は、「博物館」と命名されているが、「水族館」ではないだろうか。生きたカブトガニが水槽の中で泳いでいるわけだ。さらに飼育も。もちろんイルカやアザラシじゃないので、ショーをしたりはしないのだが。

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で、生まれて初めてカブトガニを見るのだが、まず建物自体がカブトガニの形になっている(後で気付いたが)。そして、入口のそばの水槽ではカブトガニが遊んでいて、裏返しになったり、立ち泳ぎを披露している。腹の方からみると、まったく気持ちが悪い姿だ。蟹ではないので蟹と比べるのはおかしく、クモの一種と考えられているようだが、足の動きはクモ的だ。えらがついているが、えらは下半身の方にあるので、他の動物のどれにも似ていないと言える。目は甲羅側に二対あるが、複眼式と単眼式と2セットになっている。

血液はしっかりと心臓からインとアウトの二系列になっていて、この血液は医薬品に使われるために、強制的に献血させているそうだ。3分の1を抜き取っても問題ないそうだ。

生まれてから約14年で成体になる。寿命は約25年。大人になってからは短命だ。そして世界にカブトガニは4種類しか残っていない。北米(フロリダの方)に1種類。東南アジアに2種。そして日本に1種。日本のカブトガニが一番大きく体調はメスが60センチ、オスが50センチ。

日本のカブトガニとアメリカのカブトガニの生態はかなり異なっている。というかアメリカのカブトガニはメスに比べてオスがかなり多く、産卵期には海岸に向かうメスに対し、大挙してオスが群がるというワイルドな男女関係が見られるが、日本のカブトガニは、産卵期でなくても(つまり、いつでも)、特定のオスとメスが対になって行動している。

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だから、捕獲されるときも一対になっていることが多いそうだ。しかも「対」というのが、人間の夫婦のように観念的なものではなく、物理的にメスの背中にオスが乗るというような形になっていて、オスはメスにつかまるために足の爪がカギ型に特化しているし、うまく密着できるように甲羅の前側が凹んでいる。

ただ、水槽の中を観察してみると、しじゅうくっついているというのではなく、すぐ近くにいて、くっついたり離れたりしているようにみえる。オスはメスの上に乗って、食べ物を探したりする場合にはメスに行き先を指示しているようだ。ただし、餌を食べるのはメスが先だそうだ。オスが太ったら上に乗れなくなるからだろうか。だから、産卵に行くのも対でいくのだから、争い事は起こらない。

で、2億年前の化石と現在のカブトガニの形態はほとんど変わっていない。地球上のその他の生物は、微生物を除けば、すべて進化したり滅亡したりしている。なぜ、カブトガニだけが進化しなかったか(あるいは滅亡しなかったか)というのは、この生物の最大の謎とされているのだが、博物館側の見解は簡単だ。

「完全な生物だから」。

ということらしい。強固な外敵からの防御システム、逃げ足早く、砂に潜って隠れるし、なんでも食べる食の弾力性、そして食べてもまずい感じだ。調査団は東南アジアの魚市場を探索するも、食材にはなっていないようだ(海辺にはもっとうまいものが沢山ある)。

なんとなく、日本の特徴に似ているような気もする。専守防衛の自衛隊。日本食の多様性。食えない日本人。