陶磁の道(三上次男著)

2015-02-25 00:00:43 | 書評
tojinomichi「東西文明の接点をたずねて」という副題が付いている。1969年の書である。題名からして、中近東から極東にわたる陶器文化がどのように互いに関係していったかが書かれているのだが、ちょっと現代の感覚と異なるのは、「すべて中国がナンバーワンで、他の国はその影響を受けている」という方向で書かれていること。

まあ、半分は当たっているのだろうが、現代中国をみて、あまり過去の栄光を尊重しているようにも見えないし、50年前もそうだったはずだ。

もちろん、エジプトにもシリアにもイラクにも土地の陶磁器があり、価値は高い。さらに本書には登場しないが、日本でも縄文時代にはきわめて個性的な土器が焼かれ、その後、中国の陶器とは独立した形で全国各地で美の追求が行われていた。

たとえば、土色の素朴な古備前焼など、どうやっても中国陶器とコラボは難しいだろう。

そして、本書を読むもう一つの楽しさは、中近東各地で陶器片を探す(拾う)こと。エジプト、シリア、ヨルダン、イラクと歴史上の古都市をめぐる。

それらの国は、今や荒廃とテロが支配する地球上で最悪の地となってしまった。ある意味アラーは平等感を持っていて、遺跡などの観光資源を持っていない地からは石油が産出されるし、石油資源の乏しい国は観光立国になれるはずだったのだが、いままでは石油の方が巨額の利益を生んできた。

いまさら、壺を焼いたり絨毯を織ったりコツコツ働く気にはならないのだろうね。原発補助金でやりくりしている町のような話だ。