ランナー(あさのあつこ著)

2014-01-07 00:00:09 | 書評
昨年の最後に読んだのが、『ランナー』。著者のあさのあつこ氏は岡山県人で、どうも県内に居住しているようだ。だが小説は標準語で書かれているので大丈夫だ。バッテリーシリーズとは一味異なり、複雑な事情を持つ母子家庭の長男が主人公で、高校生であり、長距離ランナーである。

runner


美しいフォームと力強いメンタルを兼ね備えた彼の母親は、夫に逃げられたうえ、夫の親戚の孤児を母親のように育て続けていたが、いつの頃か、その娘の容姿に憎き夫の影を見るようになり、児童虐待を始める。

家庭の崩壊と、スポーツを巡っての少年や少女たちの心の成長を、縦糸と横糸として小説が織りなされていく。文庫本で250ページ程度の中編作だが、これをもっと濃密にしさらに長編にしてしまうと、読むほうが、その本の重さに狂ってしまうような気がする。

東京から岡山まで新幹線で3時間20分だが、駅弁を食べ、おもむろに熱海あたりから読み始めると、京都、新大阪、新神戸と3連続停車駅のあたりで読み切る。残り30分くらいで、小説を思い起こして余韻を味わうことにしている。