ちひろと世界の絵本画家たち

2012-08-20 00:00:07 | 美術館・博物館・工芸品
chihiro1いわさきちひろは「何年もずっと読みつづけられる絵本」にこだわっていた。生涯に残した絵本は約40冊。彼女の仕事量から言えば、そう多くはないのかもしれないが、誰にも真似のできない水彩画風は、年齢や国籍、性別を問わず多くの人に受け入れられてきたし、これからも読みつづけられることになるのだろう。


損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「ちひろ美術館コレクション展(~8/26)」では、二つある彼女の美術館からのコレクションを展示している。


確か西武線沿線のちひろ美術館に行ったのは20年も前のことだったように思う。彼女の自宅兼アトリエを没後、美術館として保存したはずだった。そのうちに再訪しようと思っているうちに、逆に新宿までコレクションが来てしまった。


で、展覧会となると、客観的な展示になり、彼女のプロフィールなどが書かれていて、これまで知らなかったことが数多く書かれていて、一番驚いたのは、彼女の夫が日本共産党幹部だった松本善明氏であること。また、豊かな家庭に生まれるも、戦争の時代に日本と大陸の間を何度も往復することになった不運。そういうことと、彼女の作品とは関連があるとは、言いきれない。


たぶん、そういう私生活と、作品の間に、何か大きな精神的な「翻訳機」みたいな装置があって、抒情的な絵本が創られていくのだろう。


chihiro2彼女の仕事場の復元コーナーがあって、そこに並ぶ書籍と言うのは、世界各地の童話集とか、世界文学全集のような、かなりベーシックな古典類である。そういうものから人類の普遍性を読み解く力が、彼女にはあったということなのだろう。