「満鉄」という鉄道会社・佐藤篁之著

2012-08-08 00:00:19 | 市民A
交通新聞社というのは、結構おもしろい本を出している。満鉄の歴史について書かれた本書は、決して大手出版社から出されることはなかったのだろう。何しろ、満州といえば第二次世界大戦の結果、多くの事があえて封印されてしまったわけだ。

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それで、満鉄(南満州鉄道)の最大の魅力は特急「あじあ」と言われているのだが、なにしろ満鉄と国鉄とは全く違うものなのだ。線路の幅だって異なる。当初の車両は米国製だったそうだ。本土では英国製からスタートし国産化したのだから、これも違う。

結局、初めから国策の一部となっていた国鉄とは異なり、今の東急電鉄のように、鉄道を中核とした総合産業が満鉄の正体だったということなのだろう。

しかし、その経営というのは、「経営」、「政治」、「陸軍」というまったく異なる勢力のパワーバランスの中で総裁の椅子をめぐっての激しい争いが続いたのである。国際連盟を脱退した時の外相である松岡洋右も14代総裁になっている。しかし、既に日本の運命と同様、満鉄も経営の問題を抱えたままになっていたようで、辣腕を発揮するには遅すぎたということだろう。満鉄最後の総裁である山崎元幹は、満鉄をロシアに引き渡した後、昭和22年、法人引揚者の輸送が終わった後、最後に日本に戻った。

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本書に登場する満鉄の「社章」のいわれだが、Mという文字にレールの断面図を組み合わせたもので、本書には記されていなかったため、やっと見つけた。暴落株の見本とされる満鉄株券にも左右の下の隅にマークが刷り込まれている。

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ところで、日中戦争の入り口にあたるのが、満州某重大事件。張作霖が列車爆破で暗殺されたのだが、電車の中でその記述を読んでいた時に、急ブレーキがかかる。人身事故発生である。どうも読んでいる話と、現実とがリンクしてきたような感じが数年に一度はある。とりあえず、ホームの端は歩かないようにする。