東條英機 処刑の日(猪瀬直樹著)東條英機 処刑の日(猪瀬直樹著)

2012-01-09 00:00:19 | 書評
まず、本書は2009年に刊行された『ジミーの誕生日』を文庫化した時に、改題したもの。うっかりして、別の本と勘違いして買ってしまうと、かなり悔しい気持ちになる。もっとも、年を取ると悔しい気持ちも半分くらいになってしまうし、もっと年を取ると、同じ本だと気付かないまま読み終わってしまうのだろう。



で、改題の内容だが、ジミーこと現天皇(終戦時には皇太子)の誕生日である12月23日を選んでA級戦犯の絞首刑が行われたのが昭和23年。その当時の状況を猪瀬直樹氏が徹底調査を行っている。

本書で書かれているように、皇太子誕生日と処刑の日が同じであることを知っている人はほとんどいないとされているが、実際、私は知っていた。知っているから、「なぜ」という気持ちになり、それで本書を読むのだが、実際には、その結論だけを知りたいがために本を買うと、ちょっと残念なことになる。むしろ戦後直後の日本の世情を詳しく知りたい人に向いているのかもしれない。

マッカーサーが厚木基地に飛来する数日前まで飛行場を襲おうと計画していた部隊もあるし、マッカーサーが到着するや、すぐにサンドイッチの差し入れを行ったり、芸者の手配をしようとして断られたりと、そこのあたりが面白い。

ミズーリ号での降伏文書署名の全権である重光葵外相が、艦船の上で、あまりの消耗に水を所望して断られたところは、石田光成が関ヶ原の敗戦のあと、捕えられて処刑場に向かうところで茶を断られたことと似ている。

東京裁判の全貌については、児島襄氏の名著「東京裁判」があるため、誰が何を書こうが二番煎じの感があるのはしかたないとして、それなりに面白い。

憲法制定の段では、白洲次郎について、本書では、まったくコケにされているのだが、別の本でもそういうことを読んだことがある。


23年12月23日に処刑されたのはA級戦犯7人である。例のカルト集団では13名が「待ち」の状態となっている。