ルオー財団秘蔵 ユビュ展&新収蔵作品

2010-05-16 00:00:16 | 美術館・博物館・工芸品
なかなかの展覧会だった。汐留のパナソニックミュージアムで6月13日まで。

コストパフォーマンスもgood。500円で、さらにコーヒー割引券付きである。



ルオーと言えば、ややこどもっぽい画法で肖像画ばかり描いているようだが、実は別の題材も手掛けていた。版画集『ユビュおやじの再生』に多数の挿絵を制作している。版画は白黒の世界なのだが、原版にはフルカラーの肉筆画が用いられる。だから、現代的にいえば、版画よりも下絵の方が人気が高い。

いつものルオーと決定的に違うのが、登場人物の肌の色。つまり、黒人である。

もともとユビュはフランスの作家アルフレッド・ジャリの作になるナンセンス劇『ユビュ王』の主人公。フランスがアフリカに持つ植民地で、白人支配者であるユビュの滑稽な所作を劇にしたてていた。

これを、当時の大画商であるアンブローズ・ヴォラールがジャリ没後に劇の権利を買い取り、版画集にする。その挿絵を描かせたのがルオーである。年齢を計算するとルオーが50歳頃の請負仕事である。

しかし、当初、ルオーはこの仕事をやりたくなかったらしい。理由はわからないが、遅々として筆は進まずということだったようだ。何らかの理由で50歳になっておカネが入用になって、嫌いなタイプの仕事を請け負ったのだろうか。(顔以外描きたくないなあ、とか)

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ところが、そのうちルオーらしい生き生きとした生命力にあふれた下絵が量産されていく。アフリカにしばしば行っては、数多くの黒人画をしたためる。どうして、急に態度が変わったかは不明なのだが、当時の作品の中に、黒人娼婦が登場する絵がある。案外、そういうことだったのかもしれない。

ところで、このユビュシリーズだが欧州ではほとんど表に出ないそうだ。特異性が原因とのことだが、黒人を描くことが問題というよりも、植民地化政策を今さら公表されるのが問題なのか、よくわからない。