メキシコ湾BP海底油田漏洩で、何が始まる?

2010-05-06 00:00:38 | MBAの意見
海底油田からの漏洩は、とりあえずコンクリート・キャップで蓋を閉めることに成功したようだ(注:どうも、結局、失敗したようだ)。実際に、蓋をすることが困難な場合、大変まずいことになりそうだったが、今後は、後始末に長い時間と多くの費用がかかるということになるのだろう。(もちろん、コンクリキャップが吹き飛ぶ可能性はあるだろうが)幸い、1989年のエクソンのアラスカでのタンカー座礁事故とは異なり、気温が高いために、1年程度で油分は蒸発ないし、分解されるのではないだろうか。



タンカー輸送中の事故については、石油会社が油濁保険をかけているが、油田からの漏洩には保険があるのだろうか。世界三大メジャーの一つであるBP社の株価が急落して時価総額が数兆円減ったという報道もある。保険が有効であっても、保険会社は再保険を掛けあっているために、世界中の保険料率が上がる可能性はないのだろうか???

そして、今回の事故は、オフショア油田の開発に許可を与えようとしていたオバマ政権にとって、再度方向転換を余儀なくさせるとともに、原発、風力、太陽熱などへの過度の傾斜と、脱ガソリン依存社会への急ハンドルという結果になることが予想される。

背景としては、弊ブログ2008年11月20日「World Energy Outlook
で記したように、既に地球上の陸上大型油田の生産量はピークを打っていること。そして、今後の新興国を中心として、大幅なエネルギー転換が困難なこと。これにより、新規油田の開発がかなり進むと思われているが、そのほとんどが海上(海底)油田であることだ。

つまり、原油価格は高コストに推移すると思われる一方、それによって最大の利益を得るのが、皮肉なことに既存の油田を持っている中東各国ということになる。そして、それらの国は必ずしも米国と同じ方向の政治性を持っているわけじゃないわけだ。



前述の弊エントリから1年半が経っているのだが、その間に起きたいくつかのエポックをまとめると、

1.原油需要はリーマンショックを吸収し、2年前の水準を追い越している。

2.中東産油国はイランに限らず、原発に熱心であるが、一方で火力発電を増やしている。

3.ロシアは、将来に向けて秘蔵すると思われていた東シベリア原油の開発を促進し、市場に登場させた。

4.原油価格は、投機的水準の直前といわれるバレル当り85ドルに達したところである。

5.海上油田の弱点がBPという巨大メジャーによってしても、明確になった。

このうち、問題は2と3。一説では、産油国が火力発電(それも原油をそのまま燃やす方式)と原子力発電と二系列を確保するのは、原油価格が下がる時に(あるいは上昇させたい時に)国内で消費してしまって、市場をタイトにするためともいわれる。何しろ、彼らは、この原油価格をいくらにするかというのが数十年間もっとも重要な政策だったのだから、巧妙である。

そして、東シベリア原油。以前は、質が悪いといわれていたが、現在、市場に出てきたものは高品質である。主に中国や日本が購入している。いまのところ、極東パイプラインが完全には完成していないため、量的制限があるが、何となく前の戦争の最終局面のように、石油時代の最後のどさくさに慌てて登場したような嫌な雰囲気だ。


これらから、もっともありうるシナリオを予測するなら、

A.原油価格は、すぐに投機相場となる。100ドルを超えれば200ドルが次のターゲットになるだろう。

B.そして、需要減退をもたらし、一転して、一挙に暴落へ向かう。

C.そして、中東地域全体が政治的に不安定化していく。

そこから先は、よくわからない。