2008年の100冊目

2008-12-31 00:00:03 | 書評
今年は、いろいろな私事により、毎年の目標の100冊読破が最終日、12月31日になった。100冊目は、ぶ厚い本である。

『ロックフェラー回顧録』

8月に新潮社から頂いた一冊である。652ページで定価は2,600円×1.05である。

いただいた書物には、新潮社の某編集長の直筆サイン入りのワープロ文書で、

「・・・(前略)大部の書籍ですが、それにふさわしい読みごたえがある本だと存じます。どうぞ緑陰での読書をお楽しみください。・・・(以下略)」とのレターが挟まれていて、『読まずにBOOK-OFFに持っていってはいけない』と釘を打たれていた。



そして、652ページを読み終わった感想は、

「かなり、つまらない」ということかな。そもそも『自伝』とはそういうもので、自分のことを書くのだから、不都合なことは書かない(日本では不都合なことばかり自伝に書いた女優がいたが)。さらに、ロックフェラー一族といっても、自伝を書いたのは、デヴィッド・ロックフェラー。

ロックフェラー家を相撲で例えれば、一番有名なの横綱は、デヴィッドの祖父であるジョン・ロックフェラーである。石油王。現在の世界最大級企業のエクソンモービルの前身であるスタンダード・オイルの創業者である。

次の大関クラスが、デヴィッドの父、つまり、ジョンの息子であるジョン2世。こちらはロックフェラーセンターを完成させ、不動産事業で成功する。さらに関脇クラスは、デヴィッドの兄、つまりジョン2世の長男であるネルソン・ロックフェラー。こちらは米国副大統領になる。副大統領なら関脇じゃなくて大関ではないか、といえば、彼は共和党で大統領の席から4番目位だった。ニクソンが大統領でアグニューが副大統領だったのだが、まずアグニューが副大統領を辞任し、フォードが副大統領になる。選挙なしだ。その後、ウォーターゲート事件でニクソンが失脚し、フォードが大統領に就任。その時に副大統領の穴埋めに起用された。つまり、サブのサブ。

そして、著者のデヴィッドは、チェースマンハッタンの頭取となったのだが、本書を読むと雰囲気がわかるのだが、親の七光り、祖父の七光りということである。平幕筆頭。

上流階級以外の人間が読んでも、全然面白くないのではないだろうか。たいした努力もしないで、頭取になったことがよくわかるわけだ。


ということで、この本の話はやめて、今年読んだ本の中で、ベスト5(順不同)と奇書5(順不同)を作ってみる。(「本の雑誌」みたいだ)

ベスト5(順不同)

・サイゴン・ピックアップ(藤沢周)小説。鎌倉の不良坊主の話だ。
・ららのいた夏(川上健一)小説。青春小説。知能指数の高い人にはすすめられない。
・アメリカ彦蔵(吉村昭)ドキュメントノベル。江戸末期の漂流民で米国籍を取得した日本人。青山墓地の墓まで行った。
・犬たちの伝説(内田康夫、早坂真紀など)エッセイ集。犬バカ必読の書。
・源氏物語を読む(瀧浪貞子)文学論。源氏物語をとりまく当時の実社会の研究書。まじめすぎるのが玉に瑕。

奇書5(順不同)

・囲碁界の真相(石田章)囲碁。ここまで業界の裏側を見せてもいいのだろうか。レッスンプロになるためにプロになる女流とか。
・傷つきやすくなった世界で(石田衣良)。ひとりごと。小説界のコムロ。旬は5年間?
・日本史快刀乱麻(明石散人)。歴史。すごい珍説が並んでいる。うかつに信じて発言すると、変人扱いか。
・街場の現代思想(内田樹)。人生相談。読むと自分の人生にがっかりする。ロックフェラーのような人が読むと納得する内容だ。
・おもしろい韓国人(高信太郎)。嫌韓論。嫌韓派が読むとうれしくなるような、韓国バッシング。そこまで書かなくても・・

では、また来年・・