決断の遅過ぎた人たち

2006-06-25 00:00:08 | スポーツ
5c2a7ddc.jpg金曜朝4時開始の試合を見るため、前夜早めに眠り、さらに寝過ごした場合に備え、念のためビデオをセットする。民放のチャネルがよくわからないので、「全64試合生放送が売りのNHK-BS」を予約しておく。ビデオ始動の音で目が覚め、テレビを見ると、BSはオーストラリア×クロアチア戦を流していた。危なかった・・・

5c2a7ddc.jpgこのビデオを翌日観ると、日本×ブラジル戦とはまったく違う種類のスポーツのように感じる。要するに中央突破の体当たりとかロングボールの着地点で勝負している。喩えに使っては「重大なばちがあたる」かもしれないが、テポドン撃墜のため日本海配備のイージス艦が発射直後(あるいは直前に)に撃ち落す方式が日本やブラジルやイタリアのようなスタイルで、落下予想地点でペイトリオッツで迎撃する方式がクロアチア×オーストラリア戦ということ。日本が苦戦したのもこのあたりの対応がとれなかったことだろう。ジーコは案外、決勝トーナメント1回戦であたる隣りのグループE(イタリア・ガーナ・チェコ・アメリカ)を見て選手を選んだのかもしれない。

予選を振り返れば、ブラジルが3勝したのは予想どおりで、それを除いた3チームの対戦結果をみれば、勝負がついたのは日本×オーストラリアだけ。つまり、初戦の最後の8分を守る(あるいは1点だけにして引き分ける)ことだけしかなかったのは、誰しもそう思うだろう。交代選手が意味不明と思ったのは、当事者の選手の方も同じだったではなかったか。中田ボランチが上に行ってしまって守備力は落ちた。決勝1回戦のイタリア×オーストラリアは「逃げ切るにはどうすればいいか」という良い参考例になると思うが、帰国した代表選手が冷静にテレビを見るとも思えない。もちろん、試合前にシュート練習するというのも「決定力がない」ということを公言するようなものだから作戦が単純すぎる。

そしてプレー以外でも問題がある。まず、ユニフォームが暗い。暑い上にさらに暑苦しい。参加チームの中で最も暗い色ではないだろうか。あの色では、体が小さく見える。忍者の服は黒だと思われているが、伊賀で確認したら濃紺だった。忍者戦法?!。輝かしい歴史などないのだから、もっと体が立派に見える色やデザインに変えるべきだ。たとえば、明治大学や慶応大学ラグビー部のような太い横縞がいいかもしれない。

選手のヘアスタイルもおかしい。五分刈りや短髪で怖そうに見えるのは人相が悪い選手だけで、日本で顔の怖いのは、監督だけだ(あえて言えば、落選した大久保は顔は怖いが、背が低すぎて外国人からは顔がみえない)。優しい顔で坊主にすると、高校野球みたいになる。もっと長髪とかパーマとか染色とかして、大会当日は別の色に染め直して、相手を混乱させるとかやらなければ。

そして問題の監督のことだが、実際には、監督を選んだ上、首にしなかったサッカー協会の失敗になる。その前に、アジア予選を振り返る。

一次予選グループ3
 04-02-18 オマーン戦    1-0 ○
 04-03-31 シンガポール戦 2-1 ○
 04-06-09 インド戦      7-0 ○
 04-09-08 インド戦      4-0 ○
 04-10-13 オマーン戦    1-0 ○
 04-11-17 シンガポール   1-0 ○

 早い話、いきなり第一戦のロスタイムの久保の前にボールが転がってこなければ終わりになっていたかもしれないわけだ。インドを除けば、全部1点差で「得点能力に問題がある」ことは自明だ。最終シンガポール戦にジーコはオールドネーム達を出場させようとして、大目玉を食らったが、後で考えれば、優秀な再雇用人材を発掘できたかもしれない。

二次リーグB組
 05-02-09 北朝鮮戦   2-1 ○
 05-03-25 イラン戦   1-2 ×
 05-03-30 バーレン戦  1-0 ○
 05-06-03 バーレン戦  1-0 ○
 05-06-08 北朝鮮戦   2-0 ○
 05-08-17 イラン戦    2-1 ○

要するに北朝鮮を除く3チームの中で、バーレンに2勝したからよかったようなもので(内1試合はオウンゴールの1点で勝)、相変わらずの低得点、辛勝パターン。この段階で、ジーコの理想のサッカーとはかなり方向の違うチームであることがわかっていたはずだ。日本はブラジルではない。シュートをゴール方向に80%の確率で打てるストライカーはいないわけだ。

弊ブログでは、何度かワールドカップへの道のりについて書いている。

 04-10-15 一次予選突破
 04-10-15 OB集団引退試合に”待った”
 04-12-19 監督探しは?
 05-02-11 ジーコ最後の日(ではなかった)
 05-03-29 北米大陸にGO? かな?
 05-04-06 ジーコの悪運に乗るだけでいいのか?
 06-03-01 世界で最もサッカーの上手な通訳は

一貫して、ジーコ交代論を書いている。サッカーは団体戦だが個人の能力が必要なのも事実。全体的には個人能力重視は必要なのだが、試合の中の戦術というのは同時に一貫性がなければならない。二次リーグで負けたイラン戦は1-1に追いついた後、守りに入った選手と攻めに出た選手がいてバラバラになった。本戦オーストラリア戦の最後やブラジル戦の前半の終わりのところもそうだ。作戦は監督が指示しないとゲームにならない。

世間でも2004年後半から2005年前半はジーコ交代論のもっとも強い時期だったが、2005年6月3日のバーレン戦の悪運(オウンゴール)にめぐまれ、世界最初の代表決定国になってしまう。

もし、負けたバーレンのようにB組3位になっていたらどうだろう。
A組3位と対戦し、アジア5位となれば、北米4位と対戦し、最後の枠を争うことになっていた。

 05-10-08 バーレン×ウズベキスタン   1-1 △
 05-10-12 バーレン×ウズベキスタン   0-0 △
 05-11-12 バーレン×トリニダードトバコ  1-1 △
 05-11-16 バーレン×トリニダードトバコ  0-1 ×

そこまでジーコが監督をやっていただろうか?クビだったかもしれないし、案外、決断しなかったかもしれない。

なにしろ、日本は個人責任を嫌う国だから、ジーコをクビにできなかったのだろう。それに、川淵会長も「顔見知り」を解雇するのは気が引けたのだろう。一方、韓国はご存知のとおり、1大会につき2、3人は監督が替わる。なにしろ元大統領達を平気で逮捕して監獄に放り込む国だから監督の首も韓国海苔の如く軽い。

しかし、二次リーグの最初の頃、ヒディングはブラブラしていて、「監督を解雇する国」を待っていたわけだ。さらに、2002年まで遡れば、フランク・ライカールトがいた。ちょうどオランダ代表監督をクビになっていたところだ。彼は、現在バルセロナの監督でリーグ優勝を花道に今後の契約は未定だ。

話を戻すと、日本で、監督をシステマティックに解雇(あるいは起用)するには、個人の権限ではなく、「横綱審議会」のような有識者による「監督審議会」が必要なのだろうと思う。そして、重要な大会の節目ごとにチェックする。委員の総意として、「監督に辞職を勧告する」、というような組織だ。国民投票の代わりだ。

5c2a7ddc.jpgとはいえ、誰が審議委員になるべきというのも問題はある。日本が負けた方がいい、と思っている人はほとんどいないだろうが、野球側委員(読売のドンとか)がいるとまずいだろう。特定の家電メーカーとかスポーツ用品メーカーも公正さを欠けている。監督審議委員を決める委員会も必要なのかもしれない。何か「責任回避と利益誘導」というのは日本人のネガティブな部分だ。

ついでに言えば、ジャーナリズムにも罪がある。ちょうど私がジーコに悪態を書いている時、各紙とも同じような批判を書いていたのに、本戦出場が決まるとジーコ礼賛派に変身。負けると総攻撃だ。ある新聞は一面では”ジーコ路線(個人主義)継承を”とジーコ擁護なのにスポーツ面では「ジーコ批判一色」。さらにトルシエや岡田といった前任者まで登場させ、豪華版ジーコ批判を展開させている。ちょっと・・・