RC160Eに線を引いてバルブ挟み角を推定してみた。2010年YZF450Fが21.5度に対して80度くらいあるのだろうか。
挟み角が大きければ対辺が長くなるので、大きいバルブが使えることになり、バルブ面積を大きくするには有利だが、反面では圧縮比を高くするためにピストン兆部にドーム形の出っ張りが必要になる。
それはピストンを重くすることと火炎伝播距離を長くすることで、高回転にはデメリットをもたらす。
1980年代半ばのヤマハ・ジェネシス思想はエンジンを45°に前傾させて、重心を下げ・・・というものだったと思うが、このあたりを境にバルブ挟み角が小さくなり世代が変わったと思う。
エンジンを45°前傾させたことはインテークポートを直線化させて、さらにダウンドラフトタイプのキャブレターを使うことが出来た。ガソリンの混合気は空気より比重が重いので、通常のサイドドラフトキャブレターよりも吸気速度が速く、充填効率の向上にメリットがある。
1960年代には、かの生沢氏がイギリスに渡りF3のレースに出場しており、オートスポーツ誌に寄稿を続けていたが、その中で”僕はお金がなくてダウンドラフトのキャブレターが買えなかった・・・・”というフレーズがあったのを思い出した。
これはGDI(ガソリン・ダイレクト・インジェクション)におけるポートとピストン兆部形状により作られる燃焼室内部の渦流の説明だが、ハイコンプ型ピストンの説明と矛盾しているように思えるけれど、そうではない。
ピストン兆部の形状はハイコンプ型のドーム形状とは違い、片面がへこんでいてタンブル流(縦渦)を発生させるようになっている。これは燃焼室に直接ガソリンを噴射するために、ポート噴射より空気との混じりあいが悪いから特に強いタンブル流が必要だと思われる。
また、現代のガソリン直噴はパワーを追求するのではなく、排ガスと燃費の改善が目的であることから、ピストンが多少重くなるよりタンブル流効果の方を選んだのだろう。
従来型エンジンとした図は2バルブの場合のスワール(横渦)だ。
画像はttp://www5e.biglobe.ne.jp/~GS_1/engine_theory/port/port1.htmより転載
また、ポートがシリンダーと平行になるほど立っていない普通のエンジンでは、渦の流れ方向はこの図のように逆だ。
タンブル流の実用が進んだのは単なる性能向上だけではなく、排ガス、燃費対策の希薄燃焼の研究成果によるものだと思う。
燃えにくい希薄燃焼において効果があるタンブル流は、短い時間で燃焼しなくてはならない高回転時にも有効なのは想像できるが、それをもたらしたのはバルブ挟み角を小さくすることによる燃焼室の扁平化だ。扁平化はそれだけではなく火炎伝播距離の短縮ももたらし、バルブ径の縮小化はポート形状の改善により無視できる。
バルブ径の縮小化はむしろ慣性質量を軽減することができ、YZF450Fのようにチタンを使えばバルブスプリングを更に柔らかいものにできるためにロスを小さく出来る。