ピストンエンジンは永遠か!な?

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クラッチスラストベアリング

2005年11月21日 | クラッチ
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正確にはクラッチプッシュロッド スラストベアリングというべきかもしれません。
写真の右のまわりがギザギザのをオイルスリンガーと言います。
プッシュロッドの先端にはベアリングが付いているはずですが、外した状態ではベアリングが無くなっていました。
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右側がオイルスリンガーの本来の形です。
左の元々付いていたヤツの中心の穴が丸くなっているのがお分かりですか?
新品はプッシュロッドと一緒に回転するように穴が丸くありません。
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使用済みのスラストワッシャーですね。
ベアリングが壊れて接する面が抉られてしまっています。
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上の段が古いベアリングで、下の段が新しいものです。
本来はスラストワッシャーの間に、このような小さいスラストベアリングが入っていて、プッシュロッドの回転をリリースフィンガーに接するスラストワッシャーを回転させないようにするのです。

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新しいベアリングをプッシュロッドに組み付けた状態です。
オイルスリンガーの役目は、ベアリングの位置より低いレベルのオイルを掻き揚げて、ベアリングを潤滑させる大切なものです。このベアリングは1976年頃から採用されて現在も使われています。しかし現在のモデルではこのベアリングのトラブルを余り聞かない理由を考えるとオイルスリンガーの改良にもあるかもしれません。それはプッシュロッドが分割されていて一番右のピースとスリンガーが一体になっているので今回のようには壊れにくくなっています。スリンガーが壊れて給油されないとベアリングが小さいものだけにすぐに磨耗してしまうのでしょう。
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この釣鐘みたいなカタチのものは1936年から1975年の初期まで使われていたスラストベアリングです。
容量が大きいだけに丈夫です。同じ形の社外品もありますが評判はあまり良くないですね。
オイルスリンガーが壊れるとベアリングも逝ってしまうと言いましたが、エボ以降のクラッチはダイアフラムスプリングになりフリクションプレートの伝達が丸い棒からスプラインのようになったり、アウターシェルがベアリングで固定され切れがよくなり、ショベル以前のクラッチよりプッシュロッドの遊びを多くとれるようになり、常にベアリングに負荷が掛からなくなったのも壊れにくくなった理由かもしれません。


ドライブプーリー

2005年11月21日 | ドライブ系

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ターミー君から壊れたドライブプーリーの写真を送ってもらったので、これをネタに壊れたホントウの理由を考察してみます。
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ターミーからスポーツスターが動かなくなったとの一報を聞いて、まず可能性を考えたのはこのプーリーのスプラインでしたがやはりそうでした。何故かと言うと、過去に2例ほど見ているからです。

ナットは回っていないが緩む?
写真の面はミッション側ですが、この裏にはプーリーを止めるナットがあり、ナットの回り止めは頑丈なプレートを2本のスクリューで固定するものですからナットは緩むようには回りません。しかし、私が聞いた他の証言ではナットは緩んでいたとのことが多いです。これは矢印のメインシャフトのスペーサーを接している面が磨耗?しています。
これはワタシが「ネジのメカニズム」で説明しているように「被締結物が座屈するとネジが回らなくても緩む」ことですね。

プーリーがシャフトと空回りしたから磨耗した?
磨耗した表面は空回りした痕跡はありますが、。ターミーが(動かなくなって)変だなと思い1時間もから回りさせていれば磨耗しているかもしれませんが、これ程磨耗するとは思えないので却下ですね。
スプラインの強度は?
一般的なスプロケットの相手はチェーンなので焼入れの入ったスチールです。200馬力オーバーでもこのような事態は見たことがありませんから、プーリーはスプロケットに比べシャフトとの勘合部の幅は広いしスプラインの溝数は倍以上ですので、この辺の構造的な設計強度は充分でとても総なめになることはないように考えられます。

プーリーの材質は?
手元にはスポーツスターのプーリーは無いので断定はできませんが、ビッグツインのプーリーを見てみるとベルトと噛みあう外周部分の歯は機械加工された感じではありません。一見鋳鉄に見えるコレはもしかしたら焼結成型かもしれません。
焼結成型とは、粉末の材料を型にいれ溶解温度より低い温度下で圧力をかけ文字通り焼き固めるのですが、鋳物より仕上がり精度が高く2次加工が省略できます。つまりプーリーの歯程度なら型からでたままでもOKなんですね。強度も結構なもので日本製のバイクのエンジンのロッカーアームにも採用された例はあったと思います。最近の日本の精密技術は思った以上に高度化されてプラスティックの射出成型の金型にも焼結成型があるようです。
話は横道にそれましたが、焼入れなどの硬化処理がされているものはヤスリを掛ける事ができません、滑ってしまって削る事ができないのでそう判断できますが、手元にあるビッグツインのプーリーは簡単にヤスリがけできますので、特別な硬化処理はしてないと言えます。

結論
以上の事柄を鑑みると、プーリーの形状からして2次加工などはとてもコストアップしてしまうので、一番都合のよい焼結成型を採用したのにちがいありません。焼きいれのできない焼結成型だからスプラインはあの形状になったのでしょう。しかし硬いスペーサーと接する面が負けて座屈してしまい、シャフトとプーリーのあいだに遊びがでてしまい衝撃荷重が発生して、このような結果になったのでしょうね。

ここのところニュースを騒がせている人為的なビルの強度不足のようなことは論外にしても、バイクのちょっとした部品も理想的に事は運ばないもので、このプーリーの破損率はそう高いものではないでしょうけれど、焼結成型の製造方法では管理のしかたでは強度の充分ではない製品があるかもしれません。もし設計に欠陥があればアメリカ国内にはターミー以上の質量を有する人間はたくさんいるので多発しているでしょう。でも日本のストップ&ゴーの頻度は世界一かな?

予防
やはり、点検するしかないのでしょうね。ナットの緩みが生じていれば座屈しているのは間違いないでしょうし、外してスプラインの山が崩れかけていたり、シャフトとの遊びが大きかったら交換です。
異常がなければ、スプラインのところに勘合部に使うロックタイトを塗布しておけば多少は良いでしょう。