三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

木本虐殺(熊野虐殺)80年後

2014年10月23日 | 木本事件
 関東大虐殺の2年4か月後、1926年1月3日に、熊野地域に住む日本人が、集団で朝鮮人労働者を襲撃し、李基允さんと裵相度さんを、銃剣や鳶口[トビクチ]などを使って惨殺した。
 それから80年。いまなお、熊野市(当時、木本町とその周辺の村落)と熊野市教育委員会は、この虐殺を「まことに素朴な愛町心の発露」としている。それが、いまの日本。
 木本トンネルの道をたどって、日本の他国他地域侵略の歴史を、さらに追及していきたい。

■“大逆事件”の時代
 追悼碑を建立する会(準備会)が発足したのは、1988年9月11日だった。そして、1994年11月20日に、追悼碑除幕。
 1997年9月25日に、李基允さんと裵相度さんを追悼する碑から20キロほど南にある新宮市南谷墓地に「高木顕明師顕彰碑」が建てられた。
 2003年7月20日、新宮市内に、紀州・熊野地域に関係が深い“大逆事件”犠牲者6人、大石誠之助さん、成石平四郎さん、成石勘三郎さん、高木顕明さん、峯尾節堂さん、﨑久保誓一さんの「顕彰碑」が建てられた。
 大石誠之助さんと成石平四郎さんは1911年1月24日に絞首され、高木顕明さんは1914年6月24日に秋田監獄で自殺し、峯尾節堂さんは1919年3月6日に千葉監獄で獄死し、成石勘三郎さんは1929年5月に長崎刑務所から仮出獄し1931年1月に病死し、久保誓一さんは1929年4月に秋田刑務所から仮出獄し1955年10月に病死した。

 60年前、1946年11月3日、「明治天皇」の誕生日に、ヒロヒトの名で、「日本国憲法」が公布され、その半年後に施行された。その時から、戦犯ヒロヒトが、「日本国」と「日本国民統合」の象徴となった。
 「大逆罪」は、1947年になくなったが、天皇制は廃絶されていない。
 「大逆罪」は日本刑法から削除されたが、“大逆事件”の時代は終わっていない。
 “大逆事件”の再審請求を最高裁は、1967年に最終的棄却し、いまも、国民国家日本は、26人を「有罪」としたままである。

■「素朴な愛町心の発露」
 1983年に熊野市が発行した『熊野市史』中巻には、住民が朝鮮人を襲撃・虐殺したことが、「木本町民としてはまことに素朴な愛町心の発露であった」と書かれている。
 追悼碑を建立する会は、1989年6月4日の創立集会の翌日、熊野市に『熊野市史』の書きかえを求め、それ以後、これまで17年間、求めつづけてきた。
 だが、熊野市も熊野市教育委員会も、拒否しつづけている。

 木本トンネルは、地域住民の生活を便利にするためのものであった。そのトンネルを遠い朝鮮から来て掘っていた朝鮮人労働者を、地域の住民が集団で襲撃し、ふたりを虐殺した。在郷軍人、消防組員らを中心とする住民集団は、2人の朝鮮人を虐殺したあと、警察官らとともに、襲撃を逃れようとした朝鮮人を捕まえようとして、徹夜で山狩りした。
 その事実を、「まことに素朴な愛町心の発露」とする『熊野市史』の書きかえを求めようとする熊野市民は、少ない。
 『熊野市史』中巻には、
    「南京占領の報道が伝わると、国民は一入〔ひとしお〕感激し、町や村で祝賀会が続いた」
と書かれているが、南京大虐殺については、なにも書かれていない。『熊野市史』上巻には、
    「熊野の古代史を見るとき、神武天皇を除いて考えることはできない」
と書かれている。『熊野市史』は、天皇制を肯定し、他国他地域侵略を肯定する立場で書かれている。
 これは、『熊野市史』だけの問題ではない。

■追悼碑は一つの根拠地
 12年まえ、碑文のおわりに、わたしたちは、こう書いた。
    「わたしたちは、ふたたび故郷にかえることのことのできなかった無念の心をわずかでもなぐさめ、
   二人の虐殺の歴史的原因と責任をあきらかにするための一歩として、この碑を建立しました」。

 紀州・熊野地域の人たち、おおくの人たちとともに、つぎの一歩を!

                                           佐藤正人記


※以上は、2006年11月10日に発行された三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者(李基允・相度)の追悼碑を建立する会『会報』第44号に掲載された文章です。
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