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山梨県議会-平成24年3月23日 議第7号 東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進等に関する決議、公開されました(更新日:2012年3月29日)。

前記事に追記しながら29日夜に気付いて付記しておいたのですが、改めて読んでみたら、この山梨県議会決議はタイトルが「災害廃棄物の広域処理の推進等」となっていても、これは震災瓦礫の広域処理を否定する決議になっていました。下の部分がポイントです。


よって、県においては、国に対し、次の事項に対する所要の措置が講じられるよう求めていくことを要請する。
 1 放射性物質汚染対処特別措置法に基づく指定廃棄物の基準(8,000bq/kg)の安全性の根拠について、国民に丁寧かつ明確に説明し理解を得ること。
 2 市町村等が引き受ける災害廃棄物(がれき等)の基準設定など、より一層の安全性確保に向けた具体的な指針等を策定すること。


国による基準(8,000bq/kg)の安全性の根拠について説明できたとしても、国民は理解しない(すなわち、これを納得せず認めない)でしょう。
『放射性物質汚染対処特措法関係省令案についての主なご意見に対する考え方について』
によれば、
『(法第17条第1項について) ● 指定廃棄物の指定基準は8000ベクレル/kgではなく、クリアランスレベル(年間10マイクロシーベルト)や200ベクレル/kgとするべき。●指定廃棄物の指定基準は100ベクレルとするべき。』 という意見に対して、
『クリアランスレベルは、原子力発電所等から発生する廃棄物について、この基準以下の廃棄物及びその再生品の用途・行き先を限定せず、市場に広く流通させることも含め、あらゆる利用を想定して設定されたものです。一方、指定廃棄物の指定基準は、国が処理を行うこととする廃棄物を指定するための基準であり、クリアランスレベルとは目的・性質が異なります。』
『また、放射能濃度が8,000Bq/kgの廃棄物を通常行われている処理方法で処理する場合、処理の各工程において、周辺住民よりも被ばくしやすい作業者であっても、その被ばく線量は、内部被ばく、外部被ばくを合わせて、原子力安全委員会決定において示されためやすである1mSv/年を下回ることを安全評価によって確認しています。』
と応じています。

前半において、震災瓦礫に付着した放射性物質は 「原子力発電所等から発生する廃棄物」では無い と受け取れる表現でしょう。まさに東京電力の「無主物」主張と似たようなものです。しかも、「無主物」は既に下級裁判所で認めてしまった。
「基準の目的・性質が異なる」ということは、国民にはゆるい基準でかまわない と言っているようなもので、これに納得したバカモンがいたらしい。山梨県議会にそんな議員がいるなら山梨も滅びる。

後半において、1mSv/年というのは、震災瓦礫処理に伴う被曝だけを対象にしたものでは無いのですから、論理が破綻していることに気が付くでしょう。山梨県議会もこれを認めることはできません。
従って、議決の1.において述べられていることを踏まえれば、焼却後に国が決めた基準値をクリアーできると想定されても、山梨県民にはゆるい基準でかまわないと考えない限り、僅かでも放射能汚染が認められる震災瓦礫を受入れる決定は保留せざるをえません。

決議項目2.について、引き受ける災害廃棄物(がれき等)の基準設定は、焼却後廃棄できる基準よりも、さらに難しいでしょう。
8000ベクレル/kg、焼却前の瓦礫総重量がいかほどであろうとも、その焼却灰を集めて8000ベクレル/kg以下になるかどうかという問題です。
燃やしても「放射能(放射性物質)は消えない、移動するだけ」
瓦礫の中の総量が灰の中の総量に等しいはずです。もし総量に違いが出たら、焼却中に大気に放出されたことになります。それは大きな問題になるのです。
どういう計算をすれば瓦礫自身の汚染上限値を決めることが出来るのか、ごみ処理焼却事業には全く知識が無い私にはわかりません。
東京都や静岡県島田市など処理を進めている自治体から焼却前と後のデータを得て、山梨県が独自に計算することが出来るかも知れません。--参考・(島田市におけるバグフィルターの成果)(マスメディアが報じなくてもネットを通じて広がり、静岡茶など農産物の評価につながっていくかも知れません)
国から返答が無ければ、山梨県はこのように瓦礫自身の基準値を算出して市町村・県民に示さねば、震災瓦礫の受入れは出来ないことを山梨県議会が決議したと理解します。
前者、8000ベクレル問題に目をつぶったとしても、後者の問題の解決が出来ない限り受入れ作業はできません。 この件は特に県民への明確な説明が必要になりますし、それはWebページ公開されて全国でも参考にされる資料になるでしょう。山梨県議会は周回遅れの山梨県にトップランナーになるチャンスを与えたのだと思います。

そして、最後に焼却灰の最終処分問題が残ります。ものの順序からいえば、山梨県から県外に出すものは8000ベクレル/kg以下として最初に最終処分問題を解決しておくことが必要です
これが意味する事は、震災瓦礫焼却灰を最終処分する地域が、地域民と未来の地域民にどのようなレベルの基準値を容認するかという決定が最初になされる必要があることになります。これが全国何処においても広域処理がクリアーすべき最初のポイントです。

一つだけ言えることは「灰の中にダイヤモンドは無い」、 しかし震災瓦礫引き受け事業がダイヤモンドに変身することを期待している人々はいるでしょう。
山梨県議会はあえて触れなかったようですが、震災瓦礫には津波による重金属汚染の懸念があります。対処策としてはダイオキシン、アスベスト、六価クロムなどの問題と類似でしょう。

蛇足ですが、それじゃ被災地の膨大な震災瓦礫をどうするのだと問われれば、答えはネット上に沢山あるのでここに書くような問題では無いのです。被災地の震災瓦礫処理が進まない理由は瓦礫の量の問題では無いと私は考えています。

甲府市議会の決議について、放射能汚染問題は上に書いた通りです。震災瓦礫の広域処理が必要だと判断している理由が私にはわかりません。甲府市当局や甲府市議会からは、それについて精神論やリップサービスは無用です。お手元に届いている具体的な現地情報・データに基づく明確なメッセージが読めることを待っています。同時に焼却灰処分の県外委託先施設名を甲府市サイトに掲載してください。



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