ひろかずのブログ

加古川市・高砂市・播磨町・稲美町地域の歴史探訪。
かつて、「加印地域」と呼ばれ、一つの文化圏・経済圏であった。

八幡町探訪:鬼子母神(下村の伝承)

2007-04-11 08:50:54 |  ・加古川市八幡町

Fa3ff058     子どもが消えた。これで五人目である。

  村人は、「きっと鬼だ。神出鬼没の鬼が子どもをさらったに違いない」とささやきあった。

  不思議なことが続いている。

  北風の吹く夜、村はずれの水車小屋の近くに美しい女がさびしげに立っていた。

  若者は、その女の後をついていった。立派な家に着き、風呂にも入れてもらって気持ちがよくなり眠りこんだ。

  寒気を感じて目を覚ますと、山の中の肥壷にいた。こんなことが幾度かあった。

  子どもは、依然として帰ってこなかった。

  「これは、あの鬼の仕業に違いない」と村の修験者が、夜鬼を待った。鬼は出てこない。

  ただ、美しい女が現れた。「鬼が女に化けているに違いない」と女の後をつけた。

  女は、上西条、中西条の村を越え、城山(じょやま)に消えた。

  修験者は、城山にひそんだ。

  夜半、女の足音と子どものすすり泣きが聞こえてきた。飛び出したが誰の姿もなかった。

  「鬼子母神(きしぼじん)が子どもを食うという話を聞いたことがあるが、鬼子母神がこの山に住んでいるのではないか」と修験者は思った。

  修験者は、村の衆と相談して村の寺(萬福寺)の一角に鬼子母神を祀る祠を造った。

  その後、子どもたちはさらわれなくなったと言う。

  こんな話が、下村(加古川市八幡町)に伝わる。

  昨日のブログ「ちいさな地蔵」の水車場のあった場所と「鬼子母神(美しいて女)」の現れた場所が重なる。悲しい歴史が形を変え語られたのかもしれない。

*『ふるさとの民話』(加古川青年会議所)参照

  

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