嘉兵衛、エトロフ渡航を決める
もし、ここ(クナシリとエトロフの間の水道)で安全な航法を発見すれば、幕府の蝦夷開発が、資金面でそれなりの潤いを得ることができるというのです。
重蔵に課せられた任務は、とりあえずはそのことでした。
もっとも去年、最上徳内がクナシリからエトロフに渡ったとき、できればカムチャツカ半島にまでゆきたいという望みがあったのですが、季節がそれをゆるしませんでした。
こんどの嘉兵衛の水路調査は、そういう探検でなく、とりあえず幕府が開発を求めていたのです。
「大船を持ってゆけば、わけはありませんが・・・」と、嘉兵衛は辰悦丸のことを思いつつ言いました。
重蔵は、かぶりを振りました。
「小さな漁り舟ぐらいでも渡れる方法を考えてもらいたい。でなければ、操業のたすけにはならない」というのです。
クナシリで働いているのは、小さな漁り舟か、蝦夷舟、もしくは5、60石程度の運び船で、今後、クナシリを基地にエトロフ稼ぎをしたかったのです。
大船で渡ってしまっても、あと何の役にもたちません。
嘉兵衛は、重蔵の依頼を、いとも簡単に引き受けました。やってみたかったのです。(no4588)
*地図:クナシリ水道
◇きのう(9/9)の散歩(11、437歩)