前回は文学者と木の話でしたが、今回は文学者と鳥。
1973年の第69回芥川賞は三木卓の『鶸(ヒワ)』が受賞しました。終戦を満州で迎えた貧しい家族が家財道具をすべて売り払う羽目に陥り、ヒワを飼っていた主人公の少年が、他人に渡したくないために籠の中の小鳥を自分の手で殺すという、バーダーにとっては後味の悪いストーリーです。
このヒワが何ヒワなのか不明ですが、作品中の「黒い頭」「のどにある褐色の斑点」「肉色の嘴」という記述から推測するとマヒワのオスのようです。図鑑の分布図を見ると、満州あたりが繁殖エリアになっています。
偶然ですが、この第69回芥川賞にはもう一つ鳥を主題にした作品がノミネートされています。野呂邦暢の『鳥たちの河口』。
こちらは、有明海で鳥の写真を撮り続けている男が主人公。イワミセキレイ、ムネアカタヒバリ、カラフトアオアシシギなどマニアックな鳥の名前が出てきたり、鳥を見る視点がバーダーや野鳥フォトグラファーと同じなので、受賞作の『鶸』よりも感情移入しやすいです。
ただ、ケガしたオニアジサシを拾って自宅で手当てするあたりは「あり得ないことではない」と思いながら読んでいましたが、クライマックスで主人公がハゲワシに襲われ、カメラの三脚で応戦するというシーンは、さすがに白けました。
多くの読者にとって違和感はないでしょうが、日本にハゲワシがいないことを知っているバーダーには「???」。過去に迷鳥としてクロハゲワシが記録されていますが、日本でハゲワシに遭遇することはまずないでしょう。しかも、人間を襲うことは考えられません。
作者は諫早市に在住する元自衛官ですが、バードウォッチングや野鳥撮影のことを誰かに取材したのでしょう。けっこうリアルに描いている反面、無理にマニアックな鳥を登場させているきらいがあります。
ちなみに、この作者は第69回では三木卓の『鶸』の後塵を拝しましたが、次の第70回では『草のつるぎ』という作品で芥川賞を受賞しています。
1973年の第69回芥川賞は三木卓の『鶸(ヒワ)』が受賞しました。終戦を満州で迎えた貧しい家族が家財道具をすべて売り払う羽目に陥り、ヒワを飼っていた主人公の少年が、他人に渡したくないために籠の中の小鳥を自分の手で殺すという、バーダーにとっては後味の悪いストーリーです。
このヒワが何ヒワなのか不明ですが、作品中の「黒い頭」「のどにある褐色の斑点」「肉色の嘴」という記述から推測するとマヒワのオスのようです。図鑑の分布図を見ると、満州あたりが繁殖エリアになっています。
偶然ですが、この第69回芥川賞にはもう一つ鳥を主題にした作品がノミネートされています。野呂邦暢の『鳥たちの河口』。
こちらは、有明海で鳥の写真を撮り続けている男が主人公。イワミセキレイ、ムネアカタヒバリ、カラフトアオアシシギなどマニアックな鳥の名前が出てきたり、鳥を見る視点がバーダーや野鳥フォトグラファーと同じなので、受賞作の『鶸』よりも感情移入しやすいです。
ただ、ケガしたオニアジサシを拾って自宅で手当てするあたりは「あり得ないことではない」と思いながら読んでいましたが、クライマックスで主人公がハゲワシに襲われ、カメラの三脚で応戦するというシーンは、さすがに白けました。
多くの読者にとって違和感はないでしょうが、日本にハゲワシがいないことを知っているバーダーには「???」。過去に迷鳥としてクロハゲワシが記録されていますが、日本でハゲワシに遭遇することはまずないでしょう。しかも、人間を襲うことは考えられません。
作者は諫早市に在住する元自衛官ですが、バードウォッチングや野鳥撮影のことを誰かに取材したのでしょう。けっこうリアルに描いている反面、無理にマニアックな鳥を登場させているきらいがあります。
ちなみに、この作者は第69回では三木卓の『鶸』の後塵を拝しましたが、次の第70回では『草のつるぎ』という作品で芥川賞を受賞しています。
最近、鳥や植物の名前を使った小説を書店の店先でよく見るような気がします。
以前のように漠然とした鳥とかではなく、ヒトリシズカ、というのを見たことがあるし、世の中の流れが自然への興味が増す方向に行っているのでしょうね。
ところで私はここで紹介しておられる芥川賞作家は2人とも名前すら知りませんでした・・・
私も近年の芥川賞にはまったく無関心で、記事に書いたことも知りませんでした。たまたま、何かのきっかけで調べてみようと思い立ったら、こういう事実が分かったという経緯でした。
宇治市の図書館に作品があったので、借りて読みました。バードウォッチャーとしては『鳥たちの河口』の方が興味深いですが、筆の力としてはやはり『鶸』の方が上で下。