樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

樹木界の暴れ者-②

2010年09月09日 | 森林保護
前回は環境省の「要注意外来生物リスト」にある身近な樹木を紹介しました。このリストには載っていませんが、最近、植物学者の間で問題視されている外来樹木があります。
それはシンジュ(神樹)。天に届くほど真っ直ぐ伸びるので、英語では「天国の樹」、ドイツ語では「神の樹」と呼ぶのでこの名があります。別名はニワウルシですが、ウルシ科ではありません。
原産は中国。ハリエンジュと同じく明治のはじめに移入され、街路樹に使われたり、養蚕用に植えられたそうです。


大阪の松屋町通りに植えられているシンジュ

このシンジュが野生化しているという話を聞いて、「やっぱり!」と気づいたことがあります。いつも大阪に向かう電車の中から、あるゴミ処理場周辺に見慣れない樹木が繁茂しているのを遠目で見て、「野生化したシンジュかな?」と思っていました。先日現地に行って確認したらやはりそうでした。


ゴミ処理場周辺に無数に繁茂するシンジュ

ハリエンジュ(アカシア)ほどは注目されていませんが、各地ではびこっているようで、札幌の円山公園では2004年の台風で樹木が倒れた跡(ギャップ)にシンジュが入り込んで在来種をおびやかしつつあるようです。
動物や魚のように他の在来種を捕食するという被害ではありませんが、その強い生命力で在来種を圧倒するようになれば、結果的に本来の生態系をゆがめることになります。


シンジュは先端の葉が小さいので一見偶数羽状複葉ですが奇数羽状複葉

私は以前から気になっていることがあります。動物園では動物は檻に閉じ込めますが、植物園ではオープンエアで樹木や草花を展示しています。温室でも夏には屋根を開放しています。
その場合、鳥が飛んで来て実を食べ、その種を植物園の外に排泄して、外来植物が逸出することはないのでしょうか。風媒花や虫媒花なら簡単に繁殖できるはずです。
ハリエンジュもトウネズミモチもシンジュも、移入した時は現在のような影響があるとは予想できなかったでしょう。それと同じように、気づかないうちに植物園が外来種拡散の温床になっているのではないでしょうか。
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2 コメント

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Unknown (guitarbird)
2010-09-09 17:49:54
こんにちわ
まさにその円山の麓に住んでいますが、うちの周りで気がつくのは、
シンジュは駐車場の縁などのちょっとした空き地によく出ることです。
街路樹としては特に円山がある中央区でよく使われていて、
胸高直径50cmくらいある立派な木も多くあります。
A公園にも大きな木があり稚樹が目立ってきたので、
ちょうどこの秋にそれを駆除しようと計画しているところでした。
シンジュとニセアカシアは薪にすると火持ちがよく意外といい材だったので、
伐木したものは薪としても使えそうです。
それから円山では最近草本の外来種駆除が盛んに行われていて、
今年はイワミツバとオオハンゴンソウを人を集めて駆除していました。
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シンジュが街路樹にも (fagus06)
2010-09-10 10:53:40
よく使われているんですね、札幌では。
私が確認したゴミ処理場のシンジュはどこからやってきたのか不明です。この周辺では、シンジュの街路樹は見当たりません。
環境省の「要注意外来生物リスト」には木本よりもはるかに多くの草本が掲載されています。生態系の撹乱という意味では、樹木より草花の方が影響が大きいのかも知れませんね。
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