樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

お滝さん

2007年06月20日 | 木と言葉
うちの近所にアジサイで有名な三室戸寺というお寺があって、満開のいま全国から観光客がやってきます。テレビ局も毎年取材に来ています。
このアジサイの学名Hydrangea Otaksa(ハイドランジア・オタクサ)は、江戸時代に長崎に在留したドイツ人医師・シーボルトが命名したもので、Otaksaは「お滝さん」と呼ばれていたシーボルトの日本人妻に由来します。その後、この学名は変更されましたが、植物学の世界では有名な話です。

      
      (三室戸寺ではなく、散歩コースの花寺のガクアジサイ)

シーボルトはアジサイ以外にもたくさんの日本の植物に学名をつけています。もう一人、ツンベルグというスウェーデン人医師も同じく日本の多くの植物を命名しています。以前ご紹介しましたが、柿の学名をKakiとしたのもツンベルグです。
彼らは日本の医学の進歩に貢献した人物と思われていますが、裏の顔は違ったようです。2人を雇っていたのはオランダの東インド会社。コショウや紅茶などアジアの植物で大儲けした会社ですから、第2のコショウや紅茶を求めて各国にこうした人物を送り込んでいたのです。

      
          (栃の森で撮影した自生のコアジサイ)

現在でも、新しい医薬品や食品の材料を求めてアフリカやアマゾンの奥地に出かけるプラント・ハンターがいますが、シーボルトもツンベルグもプラント・ハンターが本来の任務だったようです。
シーボルトにいたっては、当時のドイツ政府から日本の内情視察の命令を受けていました。要するにスパイです。1828年に帰国する際には、荷物の中にご禁制の日本地図が入っていたために国外追放処分を受けています。
オランダは現在も花卉類の種苗産業では世界のトップに君臨しているようですが、その基礎は私たちが世界史で習った東インド会社にあるんですね。
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2 コメント

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珍鳥 (bulbul)
2007-06-21 06:29:05
 博物学の黎明期ですね、変った鳥もいろいろ持ち帰ったようです。そのころはなにを運ぶにしても船なんで飼育の技術も進んだんでしょうね、プラントハンターが使った植物用のコンテナを見たことがあります。犬小屋の屋根をガラスにしたようなものでした。
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そうでしょうね (fagus06)
2007-06-22 07:53:37
いろんな植物や動物を持ち帰ったでしょう。ヤツデとかアオキとか日本原産の樹木がヨーロッパの庭木として人気があるのも、彼らプラントハンターがいたからでしょう。
これまでは、シーボルトなどは日本の近代化に貢献した人物、と思っていましたが、世の中甘くないですね。彼らも、ちゃんと別の目的があったわけですから。
そのおかげで医学や薬学が進化する面もありますから、喜んでいいのか、悲しんでいいのか分かりませんが…。
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