樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

右近の橘

2007年06月04日 | 木と文化
5月中旬に、京都国立近代美術館で「福田平八郎展」を観てきました。
日本画にはあまり親近感がないですが、屋根瓦だけを描いたり、筍をカラフルに表現したり、この人の作品は驚くほどモダンで以前から好きでした。最近、美術展に行くとついモチーフの樹に目が行って純粋に絵を観ていなかったので、今回は樹木抜きでじっくり見てきました。
その代わり、近くの平安神宮で「右近の橘」を写真に納めてきました。タチバナは日本固有のミカン科の樹木。『古事記』には、タチバナの実は不老不死の霊薬と記されているそうです。

      
         (タチバナの花。撮影は5月中旬)

文化勲章はこのタチバナの花がモチーフになっています。これには逸話があって、原案は桜の花だったのですが、昭和天皇が「武士は桜木と言うように、昔から武を意味することが多い。また、桜はすぐに散る。文化や芸術に貢献した人に与える勲章にはふさわしくない。常緑の橘を用いたらどうか」と提案されたそうです。
「左近の桜」「右近の橘」と言えば、雛祭りの飾りにも登場します。京都御所のものがルーツで、雛から見て左にあるのが「左近の桜」、右にあるのが「右近の橘」。ところが、肝心の男雛・女雛の位置は地域によって違うようです。
日本や中国の伝統儀礼では向かって右が上位なので、京都の雛飾りも男雛が右、女雛が左。天子は南面し、なおかつ朝日の当たる東側が上位という考え方から、この並びになるのです。ところが、関東では逆に男雛が左、女雛が右らしいです。

      
         (平安神宮に向かって左にある右近の橘)

昭和天皇の即位式の際、国際儀礼に合わせて天皇が(向かって)左、皇后が右に並んで以来、関東では逆転したそうです。現在の結婚式で新郎が左、新婦が右に並ぶのも国際ルールということですね。ちなみに、京都市の左京区・右京区は地図で見ると左右が逆になっていますが、御所から南を向いての左・右です。
樹木の話題からそれましたが、平安神宮にはタチバナの実を使った「橘酒」を御神酒として売っています。
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4 コメント

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味見しました ? (bulbul)
2007-06-05 06:11:19
 寺社で求めるものってなんか魅力があります。昔は干支の置物みたいのを集めてたりしました。橘のお酒ですか、昔からあったようには思えないけど灼かなんでしょうね、神様は明るいところへ降りられるって聞いた記憶があります。私ご利益に引かれることはないのですがそのあたり「良いな」と思ったり、信仰ではなくて詩的な魅力っていったら良いのかなぁ、
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いや、買いませんでした (fagus06)
2007-06-05 07:22:17
300mlくらいのビンで1,000円もするので買いませんでした。多分、タチバナの実で風味がつけてあるのでしょう。
当日は修学旅行生がたくさんいましたが、お父さんのお土産に買うのでしょうね。
タチバナの実は酸味が強過ぎて、ミカンのようには食べられないらしいです。
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何も知らない私・・・ (guitarbird)
2007-06-08 14:10:53
こんにちわ、guitarbirdです
タチバナという花があるのは知りませんでした。
てっきり人の苗字の世界だけかと思ってました。
色や形やその他の装飾の言葉がつかない「タチバナ」なんですね。
ところで、苗字にも「橘」と「立花」がありますね。
もしかして由来は違うのかも、とも思いましたが・・・
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京都に橘大学という (fagus06)
2007-06-09 09:17:25
大学があります。以前、ここの仕事に関わったとき調べた情報で記事を書きました。
私もそれまではタチバナに全く親近感がありませんでした。身近にあるとか、実が食べられるという木ではないので、縁遠いのでしょうね。
平安時代、源平藤橘(げんぺいとうきつ)という四つの姓の貴族が栄えたようで、源平は知りませんが、藤原氏はフジ、橘氏はタチバナ(葉と実)を家紋にしたようです。姓や家紋と木のつながりも面白いです。
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