樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

木喰い虫の脅威

2010年08月12日 | 森林保護
3月に京都の大文字山でナラ枯れ病防除のボランティアに参加しました。その際に主宰者が心配していた通り被害が拡大しています。京都ではもうすぐ送り火が開催されますが、その山が秋でもないのに紅葉しているとローカルニュースで報道されるほど。


ナラ枯れ病で部分的に紅葉した大文字山

大文字山の近く、京都大学の裏山にあたる吉田山にも拡大し、枯れて赤く変色した樹が目立ちます。


ナラ枯れで赤くなった吉田山

さらに、京都市のど真ん中・京都御苑にも飛び火。6月に、苑内でナラ枯れ病に冒されたアラカシが43本発見され、うち4本が枯れ死、34本に薬剤を撒布してフィルムを巻いたという報道がありました。実際、1ヶ月ほど前に訪れた時にはアラカシの巨木に防除フィルムが巻いてありました。
ところが、先日再び苑内を歩いてみると、34本どころか、あちこちの樹にフィルムが巻いてあります。しかも、アラカシだけでなくコナラ、クヌギ、スダジイ、マテバシイなど他の樹種にも広がっています。


スダジイの大木


葉が枯れ始めたマテバシイ

すでに葉が枯れているコナラやマテバシイも見られ、フィルムより高い位置に木喰い虫(カシノナガキクイムシ)の穴が開いているコナラもありました。梅雨明け後の猛暑で木喰い虫の発生がピークを迎え、被害が急速に拡大したようです。


ガムテの上に見える小さな白い部分が木喰い虫の穴

苑内の樹木はもちろんですが、心配なのは生垣として植えてあるウバメガシ。被害木と同じブナ科コナラ属なので、木喰い虫に襲われる可能性があります。そうなれば、4キロに及ぶ周囲が枯れて無残な姿になります。


京都御苑を囲うウバメガシの生垣

ナラ枯れ病防除に取り組む方のメールでは、もはやお手上げ状態のようです。しかも、被害は京都府だけでなく日本全国に広がっています。恐るべき木喰い虫のパワー。後は、韓国が国家プロジェクトとして開発しているフェロモンによる防除に頼るしかないのでしょうか。
偶然かどうか、前回ご紹介した「生存のエシックス」展でナラ枯れ病に関する展示がありました。「バイオミュージック」というコンセプトで、樹木の中の木喰い虫の音を聞かせるという試みです。


木喰い虫の音が聞こえるという木

私がヘッドフォンを装着した時は残念ながら何も聞こえませんでした。その隣では、木喰い虫のさまざまな顕微鏡写真がスライド上映されていました。


スライド上映される木喰い虫の顕微鏡写真

環境と芸術という興味深いテーマですが、一生懸命防除に取り組んでいる人たちからは「何を呑気な!」と言われるかも知れませんね。
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ちどりさんへ (fagus06)
2010-08-13 06:43:33
下鴨神社もですか?
あそこはコナラやクヌギが多い森ですから、被害が出やすいでしょうね。
私は京都御苑を全コース歩いたわけではなくて、北東エリアを少し歩いただけでこんな状態でしたから、全エリアではもっとたくさんの被害木があるのだと思います。
来年、もっと酷いことになるのではないでしょうか。
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guitarbirdさんへ (fagus06)
2010-08-13 06:37:58
主宰者である昆虫学者は、北海道に飛び火するのは時間の問題だろうと言ってました。ミズナラの巨木が多いので、そうなったら大変なことになります。
宮崎県の口蹄疫は連日テレビでも報道していましたが、ナラ枯れがテレビで大きく報道されることはないようですから、一般の人々はご存知ない方が多いでしょう。
今年はもうピークが過ぎたようですが、これからが心配です。
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Unknown (ちどり)
2010-08-12 15:19:14
本当に大変なことになっているようですね。
吉田山でも御所でも、ぐるぐる巻きになっているのを見て、
ああ、かわいそうにと思っていたのですが、下鴨神社も
例に漏れずです。包帯された木が数本枯れていて無惨な姿
になっています。
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Unknown (guitarbird)
2010-08-12 11:03:28
こんにちわ
北海道には来ていないようですが、でも心配です。
読んでいるとかなり事態は深刻なようですね。
もっと一般の人の注目を喚起して対策の研究費用に
たくさんのお金がつくようになってほしいです。
返信する

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