樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

大文字山で虫退治

2010年03月15日 | 森林保護
私が通っている栃の森ではたくさんのミズナラがナラ枯れ病に侵されて枯れ死しています。周囲5.8mの巨木も倒れました。


(ナラ枯れ病で倒れたミズナラの巨木)

そのナラ枯れ病が南下し、京都市周辺の樹木にも被害が出始めました。それを食い止めるためのボランティア活動があるというので、土曜日に参加してきました。場所は、送り火で有名な大文字山。
ナラ枯れ病の原因はカシノナガキクイムシ。この虫を駆除する有効な方法が確立されていなかったのですが、京都の昆虫学者が新しい方法を考案しました。それは、虫が樹に開けた穴を爪楊枝でふさぐという、何ともシンプルなもの。
この虫はオスが樹に穴を開けてからメスを誘引し、交尾して次世代を産むので、メスが入る前に穴をふさげば繁殖を抑えられると同時に、オスも出られなくなるという作戦です。


(道具はトンカチのみ。白いのはプラスチック製の爪楊枝)

最初は木の爪楊枝を使っていたそうですが、虫が齧ってしまうので現在はプラスチック製。大工さんみたいに爪楊枝を口にくわえながら、幹に開いた0.5mmくらいの穴を見つけて1本ずつトントン打ち込んでいきます。



作業は単純ですが、樹によっては50本以上の爪楊枝を打ち込みます。約2時間の作業で私が打ち終えたのは6本。参加者は約15人でしたから、単純計算で90本ほどの樹が処理できたことになります。


(穴の周囲には細かい木屑がついています)

京都市周辺の山にミズナラはありませんが、同じ仲間のコナラやアベマキ、アラカシやシイにもカシナガが入り込んでいます。昆虫学者によると、この方法でコナラの枯死率が50%から15%に抑えられるとか。
もともと九州など南部に自生するブナ科の常緑樹(カシ類やシイ類)にとりついていたカシナガが温暖化で北上し、同じブナ科の落葉樹(ミズナラやコナラ)に入り込んでナラ枯れ病が発生したようです。カシやシイは木の構造上カシナガの被害を受けませんが、構造が異なるミズナラやコナラは枯れ死するわけです。


(まだ入り込んでいない樹はビニールシートで防御)

参加した目的はもうひとつありました。京都御苑のアラカシにカシナガが入ったという情報をキャッチしたのですが、庭のアラカシに穴が開いて根元に木屑がたまっていたので、「ひょっとしてうちの庭にもカシナガが侵入したのか?」と不安でした。下の画像を昆虫学者に見てもらって判断して欲しかったのです。


(庭のアラカシの根元にカシナガのような木屑が…)

結果は「これはゴマダラカミキリですね」。そう言えば、派手な羽色のカミキリムシがいました。カシナガみたいに爆発的に増えないようなので、しばらく放っておくことにしました。
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2 コメント

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大変ですが (guitarbird)
2010-03-16 04:57:12
おはようございます
方法は簡単ですが数が莫大ですね。
だからこのように人を集めてやる必要があるのでしょうけど、
でも効果があるなら、やってみる価値はあると思います。
そちらにはミズナラはないのですね。
よろしければ、うちの庭のどんぐりをお送りしますので
お庭で育ててみませんか(笑)。
ゴマダラカミキリなら近所の子供たちに捕らせると
喜ばれていいのではないかと思いました。
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ミズナラは (fagus06)
2010-03-16 07:28:31
こちらでは、標高800mくらいにならないと見かけないです。栃の森を歩いていると、最初はコナラ林があって、上に登るとミズナラ林に変わります。
ナラ枯れ病は、現在は秋田県まで拡大しているそうです。佐渡島にも飛び火したので、北海道にも渡るだろうと、その昆虫学者は言ってました。
韓国では国策としてフェロモンによる駆除方法に取り組んでいて、それが完成すれば、こんな人海戦術に頼らなくてもいいそうです。
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