樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

カッコーの巣の上で

2015年09月03日 | 野鳥
精神病院の内幕を描いた『カッコーの巣の上で』という映画があります。1975年のアカデミー主要5部門を独占した話題作だったので、私も観に行きました。
当時は鳥の知識がなかったのでこのタイトルに何の疑問も持たなかったのですが、カッコウは自分では子育てせず、他の鳥の巣に卵を産んで、その仮親に育てさせます。つまり、カッコウの巣は存在しないのです。
以前から「なぜ、こんなタイトルになったのだろう?」「原作者がカッコウの習性を知らないのかな?」と疑問でした。
原題は『One flew over the cuckoo's nest』。マザー・グースの詩の中にあるフレーズだそうです。また、cuckoo's nestは「精神病院」を意味するとのこと。その病院から一人の男が脱出することから、この原題が付けられたようです。
「なぜ、あり得ないタイトルに?」の答は拍子抜けするほど簡単なものでした。アメリカのカッコウは自分で巣を造って、自分で子育てするから。
日本で観察できるカッコウは托卵の習性を持っていますし、「人間はいつ托卵を知ったか?」でもご紹介したようにヨーロッパのカッコウも同様です。ところが、北米には托卵せず、自前で営巣・繁殖するカッコウがいるわけです。
動画は昨年、北信州で撮ったカッコウ。



ダーウィンも『種の起源』の中で、「アメリカカッコウは(中略)自身の巣を造り、卵と次々に孵化したひなをすべて同時に所有する」と書いています。
疑問は解けたのですが、「では、なぜ精神病院をcuckoo's nestと呼ぶのか?」という新たな疑問が湧いてきます。その答は、どうも鳴き声にあるようです。
カッコウはどの国でも鳴き声が名前になっている数少ない鳥ですが、英語のcuckooも同じく。この「クックー」という音が「狂った人」を暗喩するようです。
映画『カッコーの巣の上で』は、主演のジャック・ニコルソンが治療で廃人にされてしまうというヘビーなストーリーでした。最近、こういう胸にズシンとくる社会派の映画が少なくなりました。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする