昔の暦「二十四節気」をさらに細分化した「七十二候」では、現在の10月8日~12日頃を「鴻雁来(こうがんきたる)」と言うそうです。鴻(=白鳥)や雁がやってくる時期という意味です。
宇治にはハクチョウもガンもやってきませんが、近くの池にようやくカモが渡ってきました。
ホシハジロとキンクロハジロ
七十二候には、この「鴻雁来」以外に鳥が登場する名称が8つあります。昔の人はそれだけ頻繁に鳥の声や渡りで季節を感じていたということでしょう。
黄鶯睍(うぐいすけんかん) ウグイスが山里で鳴き始める(2月4日~8日頃)
雀始巣(すずめはじめてすくう) スズメが巣を構え始める(3月21日~25日頃)
玄鳥至(つばめきたる) ツバメが南からやって来る(4月5日~9日頃)
鴻雁北(こうがんかえる) ハクチョウやガンが北へ帰って行く(4月10日~14日頃)
鷹乃学習(たかまなぶ) タカの幼鳥が飛ぶことを覚える(7月17日~22日頃)
鶺鴒鳴(せきれいなく) セキレイが鳴き始める(9月13日~17日頃)
玄鳥去(つばめかえる) ツバメが南へ帰って行く(9月18日~22日頃)
雉始雊(きじはじめてなく) キジの雄が鳴き始める(1月15日~19日頃)
池にはマガモも渡ってきました。水に浮いている時は地味な鳥ですが、こうやって羽づくろいしているところをじっくり見ると、頭はメタリックグリーン、嘴は黄色、翼の一部はブルーや白、腹はグレー、脚はオレンジとなかなか派手ですね。
七十二候は古代中国で考案されたものを江戸時代に日本用にアレンジしたものらしいですが、本家バージョンでは72の名称のうち22に鳥が登場します。
日本バージョンに加えて、たとえば、ヤマドリが鳴かなくなる(12月7日~11日頃)、カササギが巣を作り始める(1月10日~14日頃)というものや、中には、タカが捕らえた鳥を並べて食べる(8月23日~27日)とか、カッコウが桑の樹に止まって蚕を生む(4月30~5月4日頃)など意味不明のものもあります。
秋にセキレイが鳴き始めるとか、冬にキジが鳴き始めるとか、若干「?」という部分もありますが、昔の人の自然観や季節感が伝わってきて面白いですね。