5月1日、半年ぶりに栃の森に行ってきました。今年は春の到来が遅く、予想どおり森の中にはまだ雪がたくさん残っていました。
場所によっては約50cmの残雪
樹木の芽吹きや開花も半月ほど遅れているようで、そのおかげで例年は見られないものが観察できました。その一つがマンサクの花。(正確には変種のマルバマンサク)
細くて黄色い花弁はマンサクの特徴です。凧の足のようでもあるし、息を吹き込むとピーと鳴ってクルクル巻き戻る昔の玩具「吹き戻し」にも似ています。
図鑑で知って一度実物を見たいと思いつつ、この森では積雪の時期しか見られないので、「一生無理かな~」とあきらめていましたが、季節が遅れたために思いがけず出会えました。
しかも、その隣に同じ形の花が色違いのピンクで咲いています。発見した時は「何じゃこりゃ?」でしたが、帰宅後に調べたらアカバナマンサクと判明。マルバマンサクの変種らしいです。
遅い春のおかげでもう一つ発見できたのはオニグルミの冬芽。まだ芽吹かず、ビロードのような皮をかぶったまま。ゆるキャラのぬいぐるみみたいで可愛いでしょ?
少し専門的になりますが、カバノキの仲間にシデ類があり、その中のイヌシデとアカシデは識別が難しいとされています。この森にイヌシデが自生していることは確信していましたが、アカシデがあるかどうかは不確かでした。
しかし、「花の色が違うので花期なら明確に識別できる」という図鑑の言葉どおり、アカシデも自生していることが今回はっきりしました。これも、遅い春の恩恵です。
イヌシデは花が緑
アカシデは文字通り花が赤い
下の写真は、雪の重みで折れたミズキの枝をシカが食べた跡。手前の樹皮が残っている部分は雪に埋まっていたのでしょう。この冬の寒さはシカにとっても厳しかったようで、死体も1頭ありました。
シカの食み跡
遅ればせながら、ブナも芽吹いていました。萌黄色というのか若緑色というのか、この時期のブナはこのほか美しい。気持ちが吸い取られるようです。
展開したばかりのブナの若葉
「そう言えば、子どものころ一番好きだったクレパスの色は黄緑色だったな」と思い出しながら、遅い春の森を眺めていました。