樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

毒にも薬にもなる実

2010年11月04日 | 木と医薬
名古屋で開催されていたCOP10が終了しました。その報道の中で、生物が薬の材料になる例としてタミフルに使われる八角が何度か取り上げられました。中華料理の調味料としても使われる木の実で、うちにもあります。


八角

この八角はトウシキミという中国原産のシキミ科の木の実で、名前の通り八角形です。日本で仏事に使うシキミも同じ仲間ですから、八角形の実が成ります。
ところが、トウシキミの実(八角)は香辛料に使いますが、シキミの実は有毒で食べられません。その毒性はかなり強く、『毒物及び劇物取締法』で指定を受けている唯一の植物だそうです。抽出エキスだけでなく、実そのものが危険ということらしいです。
私は信用していませんが、江戸時代の博物学者・貝原益軒は「悪しき実」から「しきみ」という名前になったと言っています。


ある植物園で撮影したシキミの実。分りにくいですが八角形

この「悪しき実」がどういう訳か中国産の八角の中に混入してドイツに輸出され、たくさんの人が中毒を起こしたという事件が過去にあったそうです。また、日本でもたまに子どもが知らずに口にして中毒に陥ることがあるとか。
シキミは樹全体に有毒成分が含まれていて、昔はオオカミが遺体を食い荒らすのを防ぐために墓に植えたことから仏事に使うようになったという説もあります。中でも、実には有毒成分が凝縮されているそうです。
一方、八角の方はタミフルの原料になることで需要が増えて、品薄になり値上がりしているようです。同じような木の実が、片や薬に、片や毒になるわけですね。
コメント (2)
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