樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

落ちない落葉樹

2020年12月10日 | 樹木
週末、久しぶりに栃の森へ行ってきました。いろいろな都合で参加できなかったので、5月以来7カ月ぶり。
冬枯れの森歩きの雰囲気が伝わるように、鳥用の望遠レンズを標準レンズに変えて、歩きながら手持ちで撮ってみました。



山の尾根や中腹にはスギも生えていますが、私たちが歩くコースはご覧のように落葉樹林。街よりも冬の訪れが早いので、樹々はすっかり落葉して、歩くと落ち葉がザクザクと音を立てます。
そんな中で、葉を落としていない落葉樹もあります。紅葉はしているのに、まだたくさんの葉が枝にしがみついているのです。下は、この森でトチノキの次に多いブナ。



コナラもまだ黄色い葉を茂らせています。



落ちない落葉樹はなぜかブナ科に多く、クヌギも若い樹は紅葉しながら落葉しません。わが家の庭にはカシワを植えていますが、写真のように紅葉したまま冬を越します。以上はいずれもブナ科の樹木。



中にはまだ緑色の葉を残している落葉樹がありました。下はオオバアサガラ。シカが忌避するので、この森ではオオバアサガラの林ができてしまいましたが、なぜか若い樹は緑の葉で冬を迎えています。



落ちない落葉樹の葉は受験のおまじないとして使われます。お知り合いに受験生がおられたら、公園や植物園でクヌギやコナラの葉を入手すれば喜ばれるかも…。
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調査疲れ?

2020年06月04日 | 樹木
週末に栃の森へ行ってきました。4月はコロナのために中止したので、約半年ぶり。いつものメンバーと顔を合わせるのも久しぶりでした。
昨年は自主調査に加えて鳥獣保護区としての調査をやりましたが、それが終わった今年は「モニタリング1000」という別の調査を依頼されました。全国1000カ所をほぼ5年ごとに調査して、鳥や環境の変化をモニターするという調査です。
2009年と2013年に続いて今回で3回目。私は耳が悪いので鳥の調査は他のメンバーに任せて、植生調査を担当。5つのポイントで樹木の種類や高さごとの被度(面積の割合)を記録したり、写真を撮りました。
林内は、毎年のことながら初夏の白い花があちこちに咲いていました。最初に目に付くのはヤブデマリ。この樹は年による変化がほとんどなく、毎年元気にたくさんの花を見せてくれます。



いつもは林道で見かけるナナカマドが、林内の谷筋で白い花を咲かせていました。今まで気づかなかったのは幼木だったからで、今年初めて花をつけたのかもしれません。



モニタリング1000の調査はいつものラインセンサス法(歩きながら記録)と違って、スポットセンサス(5つのポイントで10分間止まって記録・往復2回)なので、いつもより歩行距離が長く、時間もかかります。
そのコースにたくさん生えているサワフタギ。この樹は花が少ない年と多い年がありますが、今年はそこそこ咲いていました。



調査の歩行距離が長い上に、前日も別グループによる宇治川の調査に参加して7~8キロ歩いたこと、前夜の車中泊でよく眠れなかったこともあって、いつになく疲れました。調査が終わった段階で、いつもの目的地まで歩くというメンバーと別れて、私一人先に帰りました。
その帰路、タニウツギがいつもどおり、白い花が多い中で唯一赤い花を咲かせて、疲れを癒してくれました。



キャンプサイトに戻って、車で1時間ほど仮眠してから帰りました。うしいことに、その途中でヤマセミに遭遇。このあたりで見るのは約20年ぶりでした。
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赤い葉への疑問

2020年04月30日 | 樹木
久しぶりに樹木の話題です。1カ月ほど前、あらためて樹木を勉強し直そうと、書店で『樹木博士入門』という本を買いました。その中に、以前から疑問に思っていたことの答えが書いてあってスッキリしました。
その疑問というのは、「赤い葉はどうやって光合成するのか?」。葉が赤いということは葉緑素がないということですが、葉緑素なしに光合成はできないはずで、光合成ができなければ樹木は成長できないはずです。
その本によると、「一見赤く見えるけれど、赤いのは繊毛で、葉っぱそのものは緑」とのこと。早速、近くにあるアカメガシワの新葉で確認しました。赤い葉の表面を爪で削ると、確かに緑色の葉の表面が出てきました(写真右下の葉)。



しかし、赤い葉はほかにもいろいろあります。例えば、生け垣によく使われるカナメモチ(アカメモチ)は、今ごろ赤い新葉で覆われますが、この葉には繊毛がありません。まるっきる赤い葉です。赤くなるのは新葉だけなので、奥にある常緑の葉が光合成するのでしょうか。



もっと分からないのは、園芸品種の赤いカエデ。下の写真はご近所の庭にあるカエデですが、すべての葉がずーっと赤いままです。人工的につくられた樹木ですが、それにしても光合成なしには成長も更新もできないはずです。



アカメガシワなど落葉樹の新葉については、赤いのは繊毛だけということで納得できましたが、赤い葉への疑問はまだ残ったままとなりました。

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黒い落ち葉

2019年12月05日 | 樹木
週末に栃の森に行ってきました。11月は参加できなかったので、2カ月ぶり。そして、今年最後の森歩き。
10月の台風による崖崩れで通行止めになり、いつもより3kmほど手前でキャンプしました。おかげで、往復約20km歩くことになりました。
当日は予想以上に寒く、車の中に断熱マットと敷布団と毛布2枚を敷き、毛布1枚と羽布団とこたつカバーを掛けて寝ましたが、それでも寒いので着ていたカシミヤセーターの上にフリースのジャケットを羽織って寝ました。同行メンバーによると、朝、飲み差しの缶コーヒーを飲もうとしたら凍っていたとのこと。
林内には4~5日前に降った雪が残っていました。今回、みなさまに冬枯れの森歩きの気分を味わっていただこうと、歩きながら動画を撮りましたのでご覧ください。




この森では何度もせせらぎを渡るので、いつも長靴です。時々出会う自然観察ツアーの参加者は高価なマウンテンシューズを履いておられますが、ホームセンターで売っている3000円程度の長靴の方が歩きやすいです。
紅葉はすでに終わり、足元には落ち葉がたくさん積み重なっています。ほとんどの葉は褐色ですが、中には黒い葉があります。いつも不思議に思うのですが、ミズキ(下)はなぜか赤や黄色ではなく黒く変色して落葉します。



紅葉はアントシアン、黄葉はやカロチノイドという色素によると説明されますが、黒葉はどういう仕組みなのでしょう。ハリギリ(下)も落葉すると黒くなります。



そう言えば、昔『黒い花びら』という歌が第1回レコード大賞を受賞しましたが、『黒い落ち葉』という歌もあるんですね。歌っているのはどちらも水原弘。
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木の実を探して

2019年10月17日 | 樹木
3連休の後半、3カ月ぶりに栃の森へ行ってきました。台風19号のために一旦は中止し、予約したレンタカーもキャンセルしたのですが、東へそれたので予定通り決行となりました。
京都府南部は風も雨も大したことはなかったものの、栃の森周辺は雨が多かったようで、いつものコースにある小川が増水して渡れないので迂回しました。
時節柄、木の実に注視して歩きましたが、今年は不作のようでほとんど目立ちません。ツキノワグマが京都市内まで降りてきたのも、山の餌が少ないからでしょう。
例年、鮮やかな色で目を楽しませてくれるサワフタギも、写真のように実付きがまばら。落果したわけではなく、ほとんど結実していないようです。



迂回した林道を歩くのは約10年ぶり。いつもと風景が違うので新鮮でした。その道に赤い実が点々と落ちていて、仲間から「これ何の実?」と質問されましたが、即答できなかったので帰宅後に調べたらアオハダでした。



当日は雨が降ったり止んだりのうっとおしい天気で、傘を差したりしまったり、カメラのカバーを付けたり外したり…。ようやくナナカマドの実を見つけた時はガスっていて、スッキリしない画像になりました。



エゾユズリハも例年にくらべると実が少なく、林道脇に株がたくさんあるのに、実は探さないと分からないくらい。



そんな中、なぜかサワシバだけはたくさんの実をつけていました。シデ類の実は動物の餌にはならないので、森の住人たちは誰も喜ばないでしょうが…。

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樹木の多様性

2019年08月01日 | 樹木
前回の鳥に続いて、2週間前のことですが、栃の森の樹のご報告です。
森は結実の時期を迎えていて、いろいろな実が膨らんでいました。まず、この森の名前(私の勝手なネーミング)の由来であるトチノキ。昔は人間がこの実を食用にしたわけですが、今はネズミやシカの空腹を満たしています。


トチノキの実

今回、白神山地を訪ねた後なので、林相の違いが気になりました。
白神山地の森は樹種が少なかった。高木ではブナ、ホオノキ、ミズナラ、ウダイカンバなど、中高木ではハウチワカエデ、リョウブなど、低木ではオオカメノキ、クロモジなど、大雑把に数えて30種ほど。
一方、以前、栃の森を歩きながら自分で識別できる樹種をカウントしたことがありますが、約70種でした。白神山地にあって栃の森にないのはウダイカンバくらい。


ガマズミの実

樹木の多様性という点では、圧倒的に栃の森の方が豊かです。白神山地は緯度が高いので常緑樹が少ないということもありますが、それだけでは片づけられないようです。
何というか、白神山地の森が洗練されているのに対して、栃の森はワイルド。あちこちに倒木があったり、シカの食害で笹藪がなかったり、動物の骨が転がっていたり、豪雨でせせらぎのルートが変わったり、自然が常に動いているという感じ。


エゾユズリハの実

一方、白神山地の森は、均一な太さの高木が整然と並び、笹も密生していて、倒木もなく、風景として美しい。そんな印象でした。
もちろん、白神山地では主に尾根筋を歩いたのに対して、栃の森のコースは谷筋という環境の違いもあると思いますが、結果的に栃の森の魅力を再発見することになりました。
今回、木の実が目立ちましたが、花も咲いていましたので、最後にご紹介します。


イワガラミ


ヤマアジサイ


ナツツバキ
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白神山地の樹木

2019年07月18日 | 樹木
前回に続いて白神山地ツアーのご報告です。今回は樹木。ツアーの目的は鳥見ですが、せっかくなので、ディープなブナ林を体感すべくガイドを雇いました。
まず案内されたのがマザーツリー。当地のブナがすべてこの母樹から生まれたわけではないでしょうが、これまでに私が栃の森や各地のブナ林で目にした中で最大でした。残念ながら最も太い枝が折れて、往年の威風が損なわれていました。
その後、ガイドは林道から森の中に分け入り、腰のナタで小枝を切り開きながら奥へ奥へと進んで行きます。密林の中をヨタヨタついて行くと、立木がなく、ブナの幼木がびっしり生えた20畳ほどの空間に到着。ガイド自身が作ったという木のベンチに腰掛けていると、コーヒーをいれてくれました。
彼は客の反応や会話から案内すべきコースを選んでいるようで、鳥や樹の話をしている私たちを熱心な自然観察者と判断して、このプライベートスポットへ案内してくれたようです。
林道から眺めるだけでは把握できなかったのですが、密林の奥に分け入ると、中はブナの純林。高木はほぼ100%ブナです。その情景を動画で撮ってみました。



歩きながら目に入る低木の樹種が最初は識別できませんでした。よく見るとオオカメノキやクロモジなどですが、いつも栃の森で目にする同種に比べると葉が異様に大きいのです。しかも、栃の森ではせいぜい人間の高さ程度ですが、ここでは倍ほどの樹高。翌日に訪れた弘前大学の白神自然観察園でも同様でした。


クロモジの葉。栃の森では半分以下


マルバマンサクの葉もデカイ

帰りの飛行機の中で、「高木のブナが密生しているので降り注ぐ光が少なく、必要な光合成を行うために葉が大きくなった。そして、光をめぐる競争に勝つために上へ伸びる必要があるので樹高が高くなった」という仮説を思いつきました。
しかし、信州や東北に出かける機会が多い栃の森の同行メンバーによると、「樹木の葉は北に行くほど大きいです」とのこと。葉のサイズは、光ではなく緯度と相関関係があるようで、一度調べてみようと思います。
東北は樹の葉がデカイだけでなく、樹体そのものも大きいようで、白神山地から十二湖への移動途中に「日本最大のイチョウ」を見てきました。看板によると、樹齢1000年以上、高さ31m、幹回り22mだそうです。

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花盛りの森

2019年06月13日 | 樹木
週末、栃の森へ行ってきました。5月は都合で参加できなかったので2カ月ぶり。
前夜に少し降雨があり、当日も朝は霧が立ち込めて、森の中はしっとりしています。林道も森も花盛り。特に白い花のオンパレードでした。
最初に目に付いたのはサワフタギ。名前のとおり普通は谷筋に繁茂する樹ですが、林道脇に咲いていたので最初は同定できず、仲間に尋ねられて「マルバアオダモかな」などと適当な返事をしてしまいました。



森の中では、あちこちでヤブデマリが誇らしげに白い花を咲かせています。オオカメノキ(ムシカリ)とよく似ていますが、こちらは開花が1カ月以上遅いのと、装飾花が4弁(オオカメノキは5弁)。



エゴノキの落花がたくさんある場所に、同じ仲間のハクウンボクがよく似た花をぶら下げていました。「白雲」とまではいきませんが、結構見事です。



タニウツギはすでに花期が終わったようですが、満開のものが数株残っていました。白い花が多い中、赤系の花は目立ちます。



ヤマボウシもあちこちで白い十文字の花を咲かせていました。



アジサイ類では、ツルアジサイとコアジサイ(下)が満開。青い花はこの森では他にないので印象に残ります。



サルナシも咲いていました。一度この実を口にしたことがありますが、キウイとまったく同じ。今年の秋も食べられるかな。



栃の森の主トチノキも花はほとんど終わっていましたが、数本だけ残っていました。この森に来てこの花を見ないと何となく落ち着かない。



帰路、いつものように森の入口にある林業家で、栃のハチミツを買って家路につきました。

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萌木色の森

2019年05月09日 | 樹木
前回のご報告どおり、栃の森では花もいろいろ咲いていましたが、若葉も開き始めていて、森の中は萌木色に染まっていました。「萌黄色」とも書くようですが「萌木色」のほうが近い感じです。



春先の樹木が描き出すこの色と風景を見ると、毎年のことながら、気持ちが和らぎます。フーッと息が抜けていくような、安らかな気分になります。
こういう中に足を踏み入れて、その空気を呼吸し、音を聞き、匂いを嗅いでいると、樹や森を好きにならざるを得ないですね。



林道では、生まれたばかりのアカシデの葉が鮮やかな緑で、赤い枝とのコントラストを強調していました。



谷側に生えているイヌシデは、葉も花も展開しています。上のアカシデと下のイヌシデは葉も樹皮もよく似ていて識別が難しいですが、今の時期は分かりやすいです。



下は、一見するとシデ類に見えますが、ミズメ。関西で見られる唯一のカバノキ属です。枝の皮を爪で削って匂うとサロンパスの匂いがします。別名、アズサ(梓)。



この森はトチノキが多いので、私は勝手に「栃の森」と名付けました。その主も展葉し始めました。葉を包んでいる芽鱗は、なぜかネバネバしています。



これから、樹々の葉は大きく広がって、数もどんどん増えて、次に訪れる頃には森は緑一色に染まっているでしょう。
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雨の森歩き

2019年05月02日 | 樹木
久しぶりに樹木の話題です。週末に、栃の森に行ってきました。昨年12月2日以来、約5カ月ぶり。あいにくの雨の中、いつものメンバーが全員そろいました。
車で寝るのですが、屋根を打つ雨の音がうるさくてなかなか眠れません。朝6時、レインウェアを着用し、リュックにも防水カバーをつけて出発。雨で濡れるので動画用カメラはあきらめて、コンパクトカメラだけ持参しました。
下界はすでに初夏ですが、この森は季節が1か月以上遅く、春の目覚めを迎えたばかり。林道には、まだアセビが咲いていました。



下はイワナシの花。これでも草本ではなく、木本です。確か、日本でいちばん小さい木。



桜も満開で、下のキンキマメザクラのほか、ヤマザクラやオオヤマザクラが目を楽しませてくれました。



林内には所々に雪が残っています。でも、例年よりも少ない感じです。写真の手前の緑はバイケイソウ。有毒でシカが食べないので、どんどん増えています。



途中、オオカメノキ(ムシカリ)があちこちに白い花を咲かせていましたが、遠いので撮影を諦めていたら、折り返し地点の休憩場所の近くに1株ありました。



ヒサカキも小さな花をつけていました。この花は匂いが独特で、人によって「タクアンの匂い」とか「都市ガスの匂い」といいます。ガス漏れの通報を受けて係員が急行すると、近所の生け垣にヒサカキが植えてあったという事件が時々あるようです。



ありがたいことに復路は雨も止んで、冷たい思いをせずに歩けました。往路は気づかなかったのですが、林道ではウスギヨウラクやキイチゴ、クロモジもそれぞれの花を開いて春を告げていました。





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