昔の風景はいつのまにか変わる。賑わっていた商店街はシャッター通りに変身し、歴史ある建築物は今風に利用できず保存が困難と解体され、酒造会社や銭湯のシンボル煙突は崩され、裸電球の街灯はLEDで明々と照らすなど、散策する通りの角を曲がるたびに何かが変わっていく。
四つ辻にあるその家には、見上げるほどの高さに茂った山茶花の垣根は通りのシンボルだった。道を聞かれた時、その垣根を目安に教えたこともあった。久しぶりにそこを通りかかったら、すっかり変わっていた。地面から7分ほどはブロック、そのうえに乗っかるように山茶花が残されていた。家主さんも全面撤去は愛着からか憚れたのだろうか。それはそれでいい造作だと思いながら、いつものように童謡の「♪ たきび」を思い出した。
(1) 垣根の垣根の 曲がり角 (2) さざんかさざんか 咲いた道 (3) 木枯らし木枯らし 寒い道
たき火だたき火だ 落葉たき たき火だたき火だ 落葉たき たき火だたき火だ 落葉たき
あたろうか あたろうよ あたろうか あたろうよ あたろうか あたろうよ
北風ピープー ふいている しもやけ おててが もうかゆい 相談しながら 歩いてる
童謡の1番と2番の歌詞は、小さな四つ辻のこの場所そのものと置き換えられる。こうした城下町時代の風情を残す垣根も次第に変わる。錦帯橋畔に高い杉垣の家があり、そのきっちりと剪定された垣根越しに梅や桃、しだれ桜が見え、写真を撮る人も見かけていたがその家も杉垣が現代風に変わった。脚立を使っての選定姿を何度も拝見しているが、こうしたとこにも高齢化の波を感じる散歩道の一つがある。