
梅雨の晴れ間、植え付けの終わった田んぼには水が満々と張られ、緑の苗はしっかりと根付いているようだ。そんな稲田をから吹いてくる心地よい風を受けながら山そばの道を歩いていた。
名前を知らない薄紫色の花がひと塊になって咲いている。何かの時のブログネタに撮っておこう、アップや接写でどれがいいか思案しながら何枚目かのズームにした時に花ならぬものが液晶モニターいっぱいに現れた。
目いっぱいのズームでモニターに写ったそれは、子どもっぽくいえば怪獣の頭部だった。液晶から目をはなし見ると茶色で体長30センチくらいある生き物がそろりそろりと移動している。蛇ではない、トカケのように見える。何か獲物を狙っているようだ。目の先を見るが葉陰になっているのか何も見えない。
これもブログネタと写し始めた。何枚か写しモニターで確認する。この間も獲物に向って前進する。葉に隠れている尻尾の先まで入れた全身を撮りたい、と少し身体を動かしたら、こちらをチラッと見て草の陰に逃げ込んだ。その素早さたるや野生そのものだと納得する。
もう少し辛抱つよく待っていれば獲物捕獲の決定的瞬間が撮れたかも知れない、昔からいう「急いてはことを仕損じる」を実感した一瞬だった。通りっがりの農家の方に液晶で見てもらった。「ニホントカケ」とその名前を教えられた。ネタには逃げられたがひとつ物知りになったと思うと、飛びかうツバメが大きく見えた。
(写真:獲物を狙っているニホントカケ)