錦帯橋上流1キロあまりの桜トンネルは緩やかな曲がりがいくつか連なろ。曲がるたびに桜トンネルは趣を変え、地元の人はもとよりその季節に訪れる多くの人たちを楽しませる。
桜の花の華やかしころは気づかないが、花が散り葉を落としたその木々は気の毒なくらい痛んでいたり、朽ちたりしている姿が多い。人の世なら「ゆっくりお休み下さい」と声をかけたくなる。
数年前の台風では桜トンネルでもたくさんの木が折れたり根こそぎ倒れた。痛々しい思いがした。その頃から若い桜の木が、古い木の間に植栽され始めた。その幹も育ち今年の春は先輩の木々に負けまいと咲いた。世代交代がゆっくり進み始めた、と喜んだ。
最近、これまで頑張っていた古い幾本かが切り倒された。差し渡し60~80センチもありそうな雨に濡れた切口の色は赤みをおびてまだ活力を感じる。しかし、幹の中心は大きな空洞になり、朽ち果てた根本は三日月のように欠けている。
どの幹の空洞の中にも桜ではない新しい植物の芽が覗いている。外見からは伺い知れない幹の内側に神秘な力を感じるが、そばにたつ若木に引継いだとホットしているようにも見える。長いことご苦労さまでした、そんな気持ちでシャッターを押した。
(写真:三日月のように欠けた桜の木の切り株、中に小さな笹の葉が生えている)