この前、新聞を読んでいたら、カズオ・イシグロのインタビューが載っていた。ちなみにうちは朝日新聞。
なんでもカズオ・イシグロの脚本による
映画が出来たらしい。
映画のことはどうでもいいのだが、その記事の中に彼の小説「わたしを離さないで」の紹介文があり、とんでもないネタバレが書かれてあった。なるほどー、そういう話なのか。いままでこの小説のどんな紹介文にも書かれていなかったことが書かれていた。新聞なんか読まなければ良かったと後悔した。小説を読んでから驚きたかったなあ。
が、文庫になるまで待ってた僕が悪いんだな。
こうなったら文庫になるまでにこの記憶は消してしまおう。
カズオ・イシグロがそんなSFを書くわけがない、と思い込んで、消してしまおう。
忘れろ、忘れろ、SF忘れろ。
よし、忘れた。
前にカントを読み、カントでほかに読めそうな本がないので、今度はヘーゲルの「歴史哲学講義」(岩波文庫)を読んでいる。もう10年以上前に買った本なので結構日焼けしている。
買ったときは読んでいない。読もうとしたが読めなかった。
いま読むと結構面白い。
ヘーゲルの本は最後まで読めたことがいままでない。
なので、よく知らない。
僕のヘーゲル知識は、時間的または思想的にカントとマルクスの間にいるドイツの哲学者という程度。竹田青嗣か西研の本で昔読んだ知識のみです。
あと、大学のときにヘーゲル哲学の授業を受けたことがあって、そのときの先生がヘーゲルの名前を呼ぶときに必ずどもり、
「へっ、ヘーゲルは」
と言っていたことを思い出す。
まるで村上春樹の「ノルウェイの森」のなかに出てくる、寮で主人公と同室になる地理好きで毎朝ラジオ体操をする人みたい。彼は地理のことを言うときは必ず「ち、地理」とどもる設定だった。
あまりに好きすぎると、喋るときに異常に緊張してしまうということだろうな。
「ゆっ、ユーミン」って僕はまだ言ったことないから、さほど好きでもないってことか。
ヘーゲル哲学の授業内容自体については全く憶えてない。先生の名前も憶えていない。
ほかに思い出せるのは、ヌース、ってよく言ってたことくらい。
「へっ、ヘーゲル哲学では、……ヌースは、……へっ、ヘーゲルは、……ヌースが、……」
という授業が毎週毎週続いていた印象しかないなあ。ひどい。
しかしここまで書いてしまうと、この先生が誰だが限定できてしまうのではなかろうか。こんな授業をしているヘーゲル哲学者が全国にたくさんいるとは思えない。まあ、いいか別に。
ヌースというのは知性か理性のことみたいです。「歴史哲学講義」に出てきた。
ヘーゲルの長谷川宏訳の本は読みやすいと話題になったこともあるので、この本が無事に読み終われたら他のものも読んでみよう。
フランス料理のフルコースを箸でつまむように、西洋哲学も興味があって読みやすいものだけを自分なりに読んでいきたい。お箸の国のひとだから。(フィーチャリング・三田佳子)